※※第179話:Make Love(&Temptation).102












 ズ――――――ン…

 土曜日です。
 朝から醐留権は職員室にて、周りが心配せざるを得ないほどにうなだれていた。
 今、彼にとって致命的となる言葉はズバリ、“既読無視”である。


 (やはり…、桜葉は……チェリーブロッサムが気に入らなかったのかもしれないな……)
 落ち込むゾーラ先生は、BL関連にしておけば良かったと今さらながらものすごく後悔していた。
 いちおう主席簿の紙にまで書き出してしまったのだし。

 (もしや、チェリーブロッサムちゃんのほうが…、良かったのだろうか?)
 しかも醐留権先生は、ヒロインと同じような結論に達しているため、あわよくばヒロインの彼氏は不機嫌になるかもしれない。
 その場合こけしちゃんの既読無視は無かったことになるかもしれません。












 とまあこんな風に、醐留権は職員室にて朝からブルーとなっている、その頃。


 「んんん?」
 あだ名の件の発端者であるナナは、通学路にてとある光景を発見した。
 そして、隣の彼の手をくいくいと引っ張って、言ったのである。

 「モモちゃんと羚亜くん、どうしたんでしょう?」

 と。




 「あ?」
 彼女のよそ見によってやや不機嫌となった薔も、そちらを見ると……、

 仲良く登校している最中の羚亜と愛羅に、他校のなかなかイケメン男子が声を掛けていたのである。





 ここで耳を、そばだててみよう。


 「ずっと、気になってたんです…」
 なかなかイケメンなその、男の子は言いました。
 羚亜と愛羅は手を繋いだまま、何がなんだかポカン。


 「すごく可愛なと、思って…、良かったらお名前教えてください…」
 そんでもって、なかなかなその男の子は、自分はイケメンであるという自覚があるのだと思われるはにかみようで、明らかに愛羅を見ながら告げました。


 「どっ、どうしよう!?羚亜くん!」
 真っ赤になった愛羅は、羚亜の制服を引っ張った。
 まさかときめいちゃったのかとひどく心配してしまった彼氏が、ぐらんぐらんしてしまうほどに制服を引っ張ると、

 「悠香ちゃん呼んできたほうがいいかな!?」
 「ちょっ、愛羅さん、俺ちょっと酔ってきた…!」

 真っ赤なまま、愛羅は言いました。

 「ってちがーう!ボーイズラブお断り!いくらすごく可愛くても羚亜くんはあたしの彼氏なんだからっ!」
 「愛羅さん!?」








 今度は揺さぶられながらも羚亜が、真っ赤となって、

 「行くよ!?羚亜くん!」
 「えええ!?」

 愛羅はそのまま彼をぐいぐいと引っ張って歩きだした。

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