※※第177話:Make Love(&Make Love!).9
二人目の女性が用を済ませている間はずっと、ナナは息を潜めながら秘部を拭いていた。
ビクッ…ビクッ…
「……っ、」
もういっそここで、一度でいいからイってしまいたい。
でも、声を我慢できる保証がない、二人が例え出ていったとしても、後に誰も入ってこないという保証ももちろんないのである。
女性らは化粧直しでもしているのか、なかなか洗面台の前から離れない模様で、
「にしてもすごいイケメン親子がいたよ。」
「あれはほんとすごいわ、てか男の子のほう、こないだ見たPVの美女に激似なんだけど。」
「え!?そうなの!?」
ふと、二人はやはり色めき立って話し始めた。
…――――――親子……?
という言葉が、ナナは非常に気になってしまった。
どう考えても、思い当たるテーブルはひとつしかない。
だってこんなところで噂されるくらいだし、PVの話まで出てきたし。
やがて、二人の女性は、
「一緒にいた女の子が羨ましいよね〜。」
「ね〜。」
とか話しながら、トイレを後にしたんだとさ。
…………ぽっ
さりげなく、照れるナナ。
親子という言葉についての疑問に、面映ゆさが勝りました。
そして、
「……っ、ん…っ、」
どうしても一度イキたかったが、慎重にパンツをもとに戻すと、彼女はふたりの待つ席へとゆっくり戻っていったのだった。
薔とナナちゃんは先に外へ出てろと言い、会計はスマートに夕月が済ませた。
帰りはもちろん、如月がお迎えに来てくれました。
(あ…っ、あ…あ…っ、)
車に乗り込むと、振動が止められ、またナナはじれったさとの闘いとなった。
そんなナナの様子を、睡魔と闘っているとでも思ってくれたのだろうか、夕月は薔と話をしており、
(やっぱり…、似てるなぁ――――…)
トイレでの女性らの会話をふと思い出せたナナさんは、こんなことを思ったのだった。
(親子に間違えられても…、無理はないよね……)
帰り道は、行きに比べて道路も空いており、長いようであっという間にマンションへと着いてしまった。
「困った時は、いつでも頼れよ?」
降り際、夕月は笑いながら念を押して、
「頼る度帰国されたら堪ったもんじゃねぇよ。」
薔はそう返したのだけど。
「まあ、そう言うな。」
と、微笑んで、右手を伸ばすと薔の頭を撫でた夕月の眼差しは、
この日一番優しかったが、最も悲しげだった。
ナナにはそう、映ってしまった。
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