※※第177話:Make Love(&Make Love!).9








 「ナナちゃんは今日はやけに、大人しいな。」
 車内で、さすがの夕月はそのことに気づいたようだ。
 時刻は21時を回っているため、一同はわりと近場のレストランを目指している。



 ぎくぅうっ…

 としたナナは、咄嗟に巧い言い訳を考えようとしたのだけど、

 「あぁ、じつは俺たち今、演劇部の助っ人してんだよ、」
 笑った薔がすかさず、彼女の肩を抱き助け舟を出してくれた。

 「だからこいつは最近、台詞覚えんのに必死なんだ…」









 ……あああ、薔…なんておやさしい……

 ナナさん、たいそううっとり。
 玩具を仕込んだのは彼なんだが、これぞ従順のなせるわざ。




 「そうか、そいつは俺も観てぇな。」
 夕月はくっくっと笑って、
 「何言ってんだよ、夕月さんは忙しいだろ?」
 ナナの肩を抱いたまんま、薔は返した。

 「今回だって、まさか日本まで来てくれるとは思わなかったよ。」

 と。









 「…お前から俺に頼み事をしてくんのが、珍しかったからな。」
 夕月はふいに物腰が穏やかになった。
 心なしかとても嬉しそうな表情に見える。

 そのことにちゃんと気づいたナナだが、気づいただけに留めておいた。


 「さあ、着いたぞ。」

 そうこうしているうちに、いわゆる近くのファミリーレストランへと到着!








 じつは車に乗っている最中は、乗り心地は良かったのだけど玩具には響くためナナは感じてしまっていて、

 「よ、よくよく考えましたら…、お腹空きましたねっ…」

 これから席まで歩かなければならないことにドキドキだったが、努めて明るく隣を見た。


 「いっぱい汗かいたもんな…」
 薔は微笑んで返す。




 次の瞬間、彼の言葉にナナが赤面するより早く、

 ヴヴヴッ――――…

 何という不意討ちだろうか、玩具が緩く振動を始めたのだ。




 「……っ!?」
 びっくりして、感じすぎちゃって、ナナは思わず声を上げてしまうところだった。
 クリトリスにまで、振動は与えられる。

 車のドアが開いているため、振動音は入り込む喧騒に紛れゆく。




 「どうした?降りねぇのか?」
 ポケットの中でリモコンを操作した薔は、先に降りてから彼女へといじわるに手をさしのべる。

 「は…っ、は…いっ…」
 彼の手を取り、ナナは懸命に平常を装うとおもむろに車の外へと降り立った。








 「まるで王子様とお姫様ですね…」
 「如月、お前いつからそんなにロマンチックになったんだ?」
 さりげなく見守る、楽しげに笑う夕月とホロリの如月。

 ……じつはお姫様は王子様に、大人の玩具仕込まれちゃってますけどね!

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