※※第174話:Shout of Love.1








 ハンターのアジトと大儀な名前をつけてみるが、その建物には勇真と、親族の若いオトコが一人見習いとして出入りしていた。
 とは言っても、やることは雑用がほとんどである、本格的な狩りと呼べるようなことは実際のところしていないのだから。






 ナナを捕まえる手助けをしたオトコは、勇真に頼まれた雑用を済ませ、これから帰宅するところだった。
 呑気なもので、見張り役といったものをつけてはいないのである。
 そのことからしてもやはり、本格的ではないと言えるのかもしれない。





 バンッ――――――…!

 不意に、ドアが蹴破られるような音が響き、その後に雨風の立てる音が吹き込んできた。
 何事かと思ったオトコは、慌てて玄関へと向かう。











 ずぶ濡れのそのひとは、すでに建物内へと土足で上がり込んでいた。
 傍らには同じくずぶ濡れになった、ゴールデンレトリーバーが。

 錠をしてあったはずだが呆気なく開け放たれたドアは、強い風に揺られながらギィギィと音を立てた。



 「なっ、なんだよ…、それ以上は入ってくんなよ…」
 雰囲気で、この場にとって招かれざる客だと悟ったオトコは、すぐさま彼らを取っ捕まえようとした。


 そのとき、

 ヒュッ――――…

 オトコのすぐ目の前を、何かが目にも留まらぬ速さでかすめていったのだ。


 ぱらっ…

 切られたオトコの髪は数本、床へと舞い落ちた。









 「次は本気で喉掻っ切るぞ…」
 手にしたナイフより鋭い視線で、薔は言い放つ。
 その視線が、ただの脅しではなく本気だということを物語っていた。


 息を呑んだオトコは、それ以上何もできずじりじりと後退る。
 震える手に汗を握りしめ。





 花子は凛と、ご主人さまを見上げた。


 そこへ、

 「ちょっと!三咲先輩は無事なんでしょうね!?」

 あかりが飛び込んできたのだった。

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