※※第174話:Shout of Love.1








 ちゅっ…

 微動だにできずにいる真依のくちびるへと、屡薇はそっとくちづけた。
 やわらかな感触に、真依は思わず身震いする。


 「は……」
 ゆっくりと離したくちびるから、屡薇は吐息を漏らし、

 「ちょっ、ちょっと……あの、」

 恥ずかしさのあまり俯いた真依は、彼の目の前から逃げようとした。

 「あたし…、お姉ちゃんの代わりは…やだ……」








 その手はふるえている。


 「真依さんさ、俺の手も震えてんの、わかってる?」
 どこかしら心外そうに、屡薇は彼女の右手に左手を重ねると、

 「ほら、一緒だよね…」

 笑った。
 まぶたに吐息が触れる。


 「今ね、俺…、真依さんのこと考えながら曲作ってるよ?」
 重ねた手にゆびを絡め、屡薇は右手で撫でた彼女の髪へと、

 「とっくに、好きになってんの…」

 くちづけてくる。






 「ん…っ、」
 真依の躰は、ぶるりとふるえ、

 「俺たち付き合うってことで、いいよね?」

 屡薇は彼女を抱きしめた。





 「これ、夢ぇえっ…?」
 真依は感極まり、泣きだした。
 「夢だったらこんなに、あったかくはねぇと思うよ?」
 背中をさすり、楽しげに屡薇は笑っている。


 「うわぁあ!やられたぁあ!かっこいいいい…!」
 真っ赤になって、真依は泣きじゃくっていたのだが、

 「あのさ、真依さん、けっこういい雰囲気だから、今言うけどさ…」

 またしても、高揚した表情で気まずそうに屡薇はこんなことを言ってきた。

 「これ、どうしよっか?」











 お醤油をこぼしちゃったところのくだりを、思い出そう。

 「このままじゃ、俺、なにげに辛いんだよね…」
 と、つづけられた言葉に、

 「ちょっと!これで告白してたの!?サイアク!」
 真依は真っ赤もいいところ。




 「え〜、元はと言えば真依さんのせいじゃん、全然治まんねぇし。」
 「あっ、あたしのせいって言われてもっ…」
 廊下へ出てすぐそこにトイレがあるため、はいどうぞ!とでもいきたかったのだが、

 「ねぇ、真依さんはさ、」

 どうやらそうもいかなかったようだ。

 「俺とエッチなことすんの…、嫌?」












 「い、嫌も何も…」

 正直なところ全然嫌ではなかったけれど、恥ずかしさは相当である。

 「俺はね、したかったよ、だからずっと抑えてた、」
 ゆびを絡めて、髪を撫でると、

 ドサッ――――…

 屡薇は彼女を押し倒したのだった。

 「本気で嫌だったら、言って?止まんねぇとは思うけど…」

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