※※第174話:Shout of Love.1
「豆さぁ、寛ぎすぎじゃね?」
スタジオからの帰り道、豆を迎えに真依のアパートへ立ち寄った屡薇だったが、豆はすっかり安心しているのか真依の傍らですやすやと眠っていた。
「そう言う屡薇くんも、なんだかんだでご飯食べてくんだね。」
と、呆れている風を装いながらも内心大喜びで夕食を作ってあげた真依でございます。
「だって俺腹減ってんだもん。」
「はいはい。」
屡薇はあっけらかんとして、おかわりまでしたご飯を頬張る。
豆はご主人様の声に反応し、ぴくぴくと耳を動かしたりしている。
(よっ、よくよく考えたらこれ、気まずい…!)
ここで真依は改めて今の状況を把握し、ものすごく緊張し始めた。
そのなかで、
「真依さんて、ほんと料理上手だよね。」
ふと、彼女の得意料理であるメンチカツにソースをかけ、屡薇が笑いながら言ったのである
「メッ、メンチカツって、お醤油でも美味しいよ!?」
「あ、そうなの?」
吹き飛ばせ、気まずさ!否恥ずかしさか!?の意気で、真依は積極的に彼へと醤油さしを差し出す。
「でも俺これもう、ソースかけちゃってあんだけど、」
受け取ってはみたものの、混ぜるべきかと屡薇は躊躇い、
「あ!ごめん!」
真っ赤になった真依は、慌てて醤油さしを奪い返そうとした。
ところが、慌てすぎたため、
バシャッ――――…
屡薇のボトムスに、お醤油が零れてしまったのだ。
「わお、やらしいとこに掛かったね。」
彼は笑っておりますけれど、
「ごっ、ごめん!ほんとごめん!」
青ざめた真依はテーブルの上にあったティッシュを何枚か手にとり、応急措置として拭き取ってみた。
すると、
「いや、あのさ、真依さん…」
頭上より、たいそう気まずそうな声は落とされたのだった。
「そんなんされると俺…、勃っちゃうんだけど……」
ズザザァァアア――――…!
「わあああああ!ごめん!」
醤油のついたティッシュをひらひらと舞わせ、大赤面した真依は瞬時に後退った。
迂闊だったとは言え、かなり大胆なことをしちゃったため心臓の高鳴りも半端ない。
「あー、駄目だわ、抑えてたけどもう無理……」
今この時期ではなく……と、屡薇なりに考えてはいたのだけど、やや高揚しため息をついた彼にはさすがに限界もいいとこだったようだ。
「……キスしてもいい?」
後退り壁に背中をもたせる真依へと、屡薇はそう問いかけた。
真依は息を呑む。
何となく起きちゃった豆ではございますが、おそらく大好きな花子を見習って再び眠りに就いたのでしょう!
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