※※第173話:Stray(&Masturbation).1








 「どうして薔くんと三咲さんが、別れなきゃなんないのさ!」
 とあるファミレスにて、ドリンクバーを頼んだもののまだいっさい手をつけていない羚亜は、激怒していた。
 夕方ということもあり、まだ店内の客はまばらだ。

 「羚亜くん、泣くんじゃない!男の子だぞ!」
 「愛羅さんだって泣いてるじゃん…」
 隣に座っている愛羅は泣きながら、髪が乱れるくらいに彼氏のあたまを撫で、慰めている。


 「だからぁ、あたしたちでぇ、何かできることはないかなぁぁ?って思ってぇぇ。」
 「うんうん!」
 本日は部活を休ませてもらったこけしちゃんは、羚亜と愛羅も誘って作戦会議を開いていた。
 もちろん、公務を終えたらゾーラ先生も駆けつける模様です。







 「今日ね、やっぱり薔くんも一日中、全然元気なかったんだ…」
 同じクラスなため、羚亜もそのことがずっと気になっていたようで。
 みんなしてドリンクバーを頼み、各々に何かしらの飲み物を持ってきてはあるのだけどいっこうに量は減っていない。
 それから、一皿頼んだ大盛りのポテトにも誰もまだ手をつけてはおりません。


 ふと、

 「でもさ、急に今ってことは、この時期も何か関係しているんだと思わない?」

 愛羅が、思い付いた疑問を投げ掛けてきた。



 「愛羅さん鋭い!」
 羚亜は大感心。

 「それはねぇ、あたしも思ってたんだぁぁ、」
 ドリンクに目を落としているこけしちゃんは、

 「でねぇ、それをきっとぉ、ナナちゃぁんのおかげで薔くぅんはぁ、忘れられていたと思うのぉぉ。」

 と、言ったのである。






 「だからねぇぇ、いきなり思い出させるような何かがあってぇ、一番危ないのはナナちゃぁんだってぇ、思ったんじゃないかなぁぁ?」
 落としていた視線を前に戻し、こけしちゃんはつづける。

 「なるほど、そうかもしれない…」
 息を呑み、頷く羚亜と愛羅。






 「下手に干渉するのはかえってふたりを、危険な目に遭わせるかもしれないから難しいよね…」
 愛羅はここでようやく、ジンジャーエールの入ったグラスのストローを手にし、
 「そうなのぉぉ…」
 こけしちゃんもつられてか、メロンソーダの入ったグラスのストローを手にし、
 「要さん早く仕事終わらないかな…」
 羚亜もつられて、コカ・コーラの入ったグラスのストローを手にすると、

 一斉にすすった。

 炭酸飲料の割合が非常に高い席となっております。
 氷もだいぶ溶けて、味も炭酸も薄くなってはおりますけれど。



 雨が降り出しそうだが、まだ空は泣き出さない。

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