※※第172話:Make Love(but…Stray).99








 「遅くにごめん!てか、うっわあ!俺の豆がさらに天使になった〜!」
 パーティーも大盛り上がりで幕を閉じ、スタジオから帰った屡薇が豆をお迎えにやってきた。
 もうすぐ、日付は変わろうという時刻のことだ。

 “ごしゅじんさま、おつかれさま!”
 「お前ほんと、天使だな〜!リボンに薔薇までついてんのか〜!この親孝行者め〜!」
 お隣の家の玄関にて、屡薇は豆の写真をスマートなほうの携帯電話に収め始める。



 「…いつまで撮ってんだ?」
 「あっ、やべ、夢中になりすぎた。」
 尻尾をずっと振っていた豆は、やや呆れていた薔の手から屡薇の手へと。
 薔が抱っこしているなか、激写していたのか。





 ふと、

 「嫁さんは?もう寝てんの?」

 屡薇は笑いながら、尋ねてみたのである。

 「あいつは人一倍はしゃいでたからな、ソファーで寝ちまったよ、」
 薔も笑って答えた。




 まさにそのとき、

 ぐいっ…

 豆を片手で抱き、屡薇は思わず薔の腕を掴んでいた。

 「まさかとは……思うけどさ、薔ちゃん、」









 「変なこと考えてないよね?」












 「…変なことって、何だよ…」
 いたって冷静に、薔は返す。

 「それは…、俺には、よく…わかんねぇけど、」
 屡薇はゆっくりと、手を離してゆき、

 「ごめん…、何でもねえ、おやすみ…」

 ぽつりと言葉にして、豆と一緒に隣の部屋へと帰っていったのだった。






 閉められたドアへと、目をやりながら、

 「はぁ――――――…」

 深く息をした薔は、リビングへと戻っていった。















 花子はすべて、わかっていた。
 もうすぐ、“あの日”が来ることを。
 そして花子は、ご主人さまの気持ちもよくよく、わかっておりました。











 「花子……」
 リビングへ戻ると、薔は花子を抱きしめた。
 花子は大好きなご主人さまを安心させるかのように、ずっと尻尾を振っている。


 すでに日付は、4月17日へと変わっていた。




 花子のあたまをなでなでしてから、ゆっくりと離れた薔は、キッチンへと向かって歩いていった。

 片付けも済んだキッチンは、整然としている。



 そして、リビングから届く光のなかで、彼が鞘に収められた“あるもの”を手にした瞬間、

 「んんん……?」

 ナナが目を覚ましたのだ。

 「んあぁ、すみません…、寝ちゃって…ました……」












 「おまえの可愛い寝顔も、写真撮っといてやったぞ?」
 「んええ!?」

 薔は笑いながら、リビングへと戻ってくる。



 「あれ…?もう、17日になっちゃったんですか…?」
 ちょっと重かった目をこすり、時計を見てみたナナは、突然、

 そっと手を取られていた。






 「ベッド行こっか、」

 彼女を見下ろし、薔はやさしく微笑んだ。

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