※※第171話:Make Love(&Pain).98








 (三咲先輩、めっちゃ可愛い…)
 噂を聞きつけたあかりも、ちゃっかりギャラリーに参加していた。
 しかも、周りは女の子の割合が圧倒的に高いため(中には男子もいるけどね)、彼女にとってはかなりオイシイ状況である。

 (あの子ほんっと懲りげないね…!)
 果蘭を筆頭とする親衛隊の皆さんやなんかの視線は、痛いものだが。
 あかりにとっては、それも確実にオイシイはずだ。




 今回は何てったって大会なので本番でアドリブというわけにもいかないため、稽古をしながらちょっとずつ練り直していくこととなった。


 まだ箕島くんは何かを、熱く語りながら周りを若干引かせているなか、

 チラリ…

 とナナは隣の薔を見て、想ったのである。

 (やっぱりこのひと、元気ないなぁ…)

 と。





 昨日、彼が血を流していた理由も、結局は聞けず終いだ。
 そして、あれから彼の様子は、どことなくおかしい。
 ふいに、物憂げな表情を見せる。
 それに気づいているのはきっと、ナナだけだ。
 だからこそ苦しい。


 何となく、何となくだが、“あの男”の影を感じずにはいられなかった。






 「何でずっと見てんだ?」

 ……ドキッ!

 密かに送っていたつもりだが、視線に気づかれてしまったようだ。


 「す、すみません…、見ちゃって…ました……」
 ドキドキしながら、感じていた切なさを隠してナナは答え、

 「ふーん…」

 薔は彼女を見ながら、笑っている。



 ……あ、まただ……

 ナナの胸はきゅっと締め付けられた。
 彼はやっぱりどこかしら、愁いを含んでいる。







 (目と目で通じあってるんでしょうか…?)

 ナナと薔は完全なるふたりっきりワールドに突入しちゃっておりますが、只今、演劇部の皆さんと打ち合わせ中でございます故。


 「あたしもうダメだ…、笑いすぎて肋骨折れそう……」
 「サインほしいなぁ……」
 変人に認定された部長さんと副部長くんの呟き。








 この日は念入りに打ち合わせをして、夕方頃にお開きとなりました。

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