※※第170話:Make Love(&Healing).97
ちゅっ…
ほんとうに、やさしく、彼の腕へとキスをした。
「…いっそ全部吸っちまうか?」
傷口へ向かって舌を這わす彼女のあたまを撫でながら、薔はふと笑って言葉にし、
「そんなの…っ、ダメですよっ…」
ナナは潤んだ瞳で、懸命に言い聞かせる。
すると、
「それが…俺とおまえがずっと一緒にいられる、もうひとつの方法だろ…?」
彼はやけに、消え入りそうな言葉を浮かべた。
「おまえを永遠に手に入れるためなら……俺はおまえに殺されたって構わねぇんだ…」
死がふたりを分かつまでなどと悠長なことは言ってられない、一秒先にだって何が起こるかわからない、ナナが持ち合わせている時間と薔が持ち合わせている時間には、決して抗えはしない、おそろしいほどに圧倒的な違いが存在していた――――――…
「……っ、う…っ、」
とうとう、ナナはまた泣き出してしまった。
「…ごめん、今のは忘れてくれ…」
薔はまたやさしく、彼女の涙を拭う。
「う…っふ、ん…っ、」
…ッ…チュッ…
そしてナナは泣きながら、彼の傷口を癒すように舐め、
「……っ、はぁ…っ、」
瞳を閉じた薔は、少し乱れた息を上げ、告げたのだった。
「でも…これだけは忘れんな、」
「狂っちまうほど、俺はおまえを愛してんだよ……」
ツッ――…
「は…っ、あ…っ、」
傷口がきれいに塞がって、ゆっくりとくちびるを離してゆくと唾液は糸を引いて、
「ありがとな?ナナ、」
先ほどまでの儚さはどこへやら、薔はいじわるな微笑みと共に確かめてきた。
「美味かったか?」
こくんっ…
とナナは、火照った顔で頷いてから、
「あっ、でもっ…、血液はっ、もう大丈夫ですよっ…?」
慌てて付け足した。
くすっ…
と笑った薔は、彼女の顎を持ってくちびるを親指で撫でると言いました。
「今の言い方だと…別のが欲しいみてぇだな?」
ドキッ…!
としたナナは、みるみるうちに頬を赤く染めてゆく。
「猫になっていっぱいエッチなことしたくせにな…」
まるで吐息のように、妖しく吹き掛けてから、
グイッ――――…
薔は彼女を強引に引っ張って、上へと乗っけたのだった。
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