※※第170話:Make Love(&Healing).97
「んんん……?」
ナナはおもむろに、目を覚ました。
ベッドで眠りに落ちた記憶はないが、ベッドに寝かされている。
ベッドサイドの薄明かりを灯し、時計を見やるともうすぐ20時になろうとしていた。
「あわあ!もうこんな時間だよ!」
ガバリと起き上がり、ベッドから飛び降りるとナナは急いでリビングへと向かっていった。
「すみません!寝ちゃいましたぁ!」
リビングへ入ってドアを閉めるとすぐに、ナナは大声で謝りぺこりとあたまを下げた。
そしてすぐさま顔を上げると、
「…すげえ可愛い顔して寝てたぞ?」
ソファへ横になっていた薔は、彼女へと視線を送り微笑んだ。
「…………薔…?」
彼の顔色が悪いことに気づいたナナは、慎重にソファへと近づいてゆく。
ナナが目覚めたため後はすべて彼女に託したのだろうか、ご主人さまに寄り添っていた花子は豆と共にリビングを後にする。
そのとき、
「どっ、どうなさったんですかぁ!?」
赤く血の流れている彼の腕を目にし、ひどく青ざめ彼女は薔へと駆け寄った。
あきらかに、誰かに噛まれた傷痕が残っている。
「大丈夫ですか!?誰がこんな酷いことをっ…!」
無性に怒りはこみ上げ、ナナはその怒りによって思わず泣き出したのだけど、
「俺のせいだから気にすんな…」
思いの外、薔は穏やかな声を掛けてきた。
まるでやさしくなだめるかのように。
ナナが“そんなことは絶対にないです!”と、返すより早く、
「それに、おまえがいるから大丈夫だろ?」
薔はゆっくりと伸ばした手で、彼女の涙を拭うとクスッと笑ったのだ。
胸がきゅうっと締めつけられて、涙を拭われているのにさらに泣けて、ナナは頬に当てられた愛しいひとの手に両手を重ねた。
あたたかく包み込むように。
「この傷…癒してほしい……」
やがて囁きに導かれ、
彼女はそっと、彼の腕を取った。
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