※※第169話:Make Love(&Sex aid).11







 ひとまず、屡薇をリビングで待たせたまま、ナナと薔は昼食となった。
 屡薇はすでに、真依と済ませてございますので。



 「豆〜、可愛いな〜、俺の癒しの豆〜!」
 「ワン(ごしゅんさま、ぼくいまごはんたべてる)!」
 屡薇はリビングにてごはん中の豆を構いまくっている。


 「なんか、様子がおかしいですね…」
 「いつもおかしいだろ、見んな。」
 ナナですらその様子のおかしさに気づいておる。





 「Stars以来ネットでは、俺の恋人薔ちゃんになってんだけど…、俺もういっそ、薔ちゃん一筋にしよっかな…」
 屡薇はどこかしら遠い目で、レースカーテン越しの空を見上げてから、

 「何を言ってるのーっ!?」
 「その口殺いでいいか?」
 「うわぁ、仲良し夫婦。俺黙っときます。」

 口をつぐんだ。


 ……そういうのはこけし姉さんに任せておけばいいから。







 やがて、昼食も後片付けも終えまして、

 「待ってたよ、薔ちゃ〜ん!」
 「お前、酔ってるわけじゃねぇよな?」
 「酔ってねぇよ〜、薔ちゃんが好きなだけ〜!」
 「…突き落とすぞ?」
 「それ困るわ〜!」

 薔と屡薇は連れ立って、ベランダへと出ていった(こけしちゃん的にはオイシイシチュエーションだ)。



 何だかムウッとしたナナではあるが、

 (そうだ!こけしちゃんの小説を今、読もう!)

 ふと閃き、リビングでの読書タイムとなりました。













 雲が多く流れるやや控えめな青空が、ここから見える限りではどこまでも広がっている。
 吹き抜ける風は春を乗せあたたかい。




 「……俺って、何気にヘタレだよね、」
 ベランダに並んで、一部始終を話した屡薇は自嘲気味に呟いた。

 「ヘタレじゃねぇだろ。」
 「そうかな?ならいいけど。」

 薔の言葉に一安心な屡薇ではございますが、薔はただ、ナナに一度ヘタレと言ったことがあるので他のやつにヘタレとは言いたくないだけの話であります。



 「ちなみに俺好きな子にはちょっと、意地悪したくなっちゃうんだよね。」
 「あんま泣かせんなよ?」

 ……君がそれ言うか?



 やわらかな風が、髪を揺らすそのなかで、

 「重荷にしても何にしても、自分が感じてるもんを、相手が受け取った時に同じ重さとは限んねぇだろ?」

 前を見つめながら薔は確かめてきた。




 「そう、なのかな?」
 屡薇にはその答えは、まだわからない。

 すると薔は、

 「現にそうだろ。お前にとっては無意識のキスでも、相手は泣いて帰っちまったんだからな、」

 どこかしら遠くを見て、つづけたのだった。

 「もっと、自分の中での重荷じゃなくて、そいつの長年の想いを中心に考えてやれよ。…そうすりゃ自分の想いだって、もう少しちゃんと見えてくんじゃねぇのか?」

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