※※第159話:Make Love(&Attachment).89






 「ええ!?いっ、いいです!同情はいりませんから!」
 真っ赤になった真依は、手をブンブンと横に振ると、

 「それに隣の彼に悪いですし!」

 声を張り上げた。



 「隣の彼?」
 屡薇はキョトン。

 「あ!なんかあたしすごく図々しい!それに、さっき彼氏は彼女を連れてて…、え?どういうこと?」
 頭の中で収拾がつかなくなった真依は、オロオロしだし、

 「あぁ、なるほど、」

 ピンときた屡薇は、大笑いをし始めて。


 今度は真依が、キョトンでありますが、

 「真依さんてけっこうさ、俺のこと調べ上げてんじゃん。」

 笑いながら返されたこの言葉を、否定できるほどの余裕はすでになかった。


 …――屡薇の脳裏には、父のことがかすめる。
 もしも、彼女がそれを、受け入れてくれるのなら、そのときは――――――…







 「そうだ、真依さん、友達始め?に何か飯作ってよ、」
 突然、屡薇はこんなことを言いだし、

 「はぁ!?何であたしが、」

 真依はこれでもかと言うほど、赤面し慌てふためいた。



 「だって俺が作った昼飯、あれだよ?不味すぎて全部は食えなかった。」
 「うわぁ…、何作ってあるんですか?あれ、」
 「わかんね。」
 例の昼食であるが、どうやら百年の恋も一時に冷めるほどの代物ではなかったようで、

 「し、仕方ないですね…」
 「やった、」

 真依はしぶしぶと思いきや内心かなり喜んで、キッチンをお借りしたのだった。


 「って、材料これだけですか!?」
 「一緒に買いに行く?」
 「い、いいです!これだけでも美味しいもの作ってみせます!」
 「わお、たのもし。」

 ……ほんとは一緒にお買い物行きたいくせに。










 じつは、祥子の手紙には、こんな想いも綴られていたのだ。


 “…真依はきっと、私よりも先にあなたを好きになったの。
 それを知りながら、私はあなたを私のものにしました。
 だから、卑怯な私が、もしもこの世からいなくなるようなことがあったら、

 そのときはどうか、真依を、よろしくね。


 どこまでも私は、卑怯でしょ?
 愛してくれて、ありがとう。”














 …――――手探りで歩けば、手なんて傷だらけで、
 足掻いて進めば、足なんて泥だらけだ。

 それでも、全てには意味があって、傷や泥はいつしか証に変わるだろう。

 人はきっと誰しもが、自分にしか裁けない罪を抱えて生きている。

 だからこそ、うつくしい。

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