※※第159話:Make Love(&Attachment).89







 「ん…っ、ふ…っん、」

 ちゅぷっ…くちゅっ…

 夢中になってキスをむさぼるナナは、つよく彼へとしがみつく。

 抱き返した薔は、ディープにキスをつづけたまま、

 部屋の中へと向かいだした。


 「は…っ、ん、」

 カツンッ…

 艶かしく肌を撫でながら脚を持ち上げた手が、片方ずつ靴を脱がしてゆく。

 壁へと薔は寄りかかり、片手で彼女の腰を抱いて支えながら、手際よく靴を脱がしてしまうと、

 「……止まんねぇな、」

 ふと、少しだけくちびるを離し、吹き掛けたのだ。


 「あ…っ、」
 ナナはゾクゾクと感じてしまい、すぐにまたくちびるは奪われ、

 「ん――――――…っ…」

 溶かされそうなキスに融けて、舌で奥を探りあった。















 ――――――――…

 屡薇は黙って、亡き恋人からの手紙を読んでいた。

 ほんとうは今すぐにでも帰りたい真依であるが、足は裏腹か一歩も動かすことができず、ただ静かにその様子を見守る。


 白い便箋は、一枚だけ、祥子はそこに一体何を綴ったのだろうか、

 「……っ、」

 屡薇は、涙を流し始めた。




 ようやく、サングラスを掛けずに生活できるようになった瞳が、奥からちりちりと熱くなる。

 「ごめっ…」
 と笑って、彼が涙を拭うと、

 ポロッ…

 真依の瞳からとうとう、一粒の涙は零れ落ちた。




 「じゃあ、あたしはこれで…」
 掛ける言葉も見つからないまま、まるで何事もなかったかのように真依は屡薇へと背を向ける。

 そのとき、

 「ねぇ、」

 優しい声を掛けられた。

 「今日は何で、キーホルダー付けてねぇの?」







 びくっ…

 真依の足は、思わず止まる。

 「あれさ、今では手に入んねぇからけっこう貴重だよ?」
 屡薇が笑って、そう続けると、


 「お姉ちゃんはずるいよ!!」

 せきを切ったかのように、真依は泣き叫び出した。




 「あたしは、お姉ちゃんのために作った歌なんて聴きたくもなかった!!だって今でも、あなたに愛されてるんだもん!!あたしが入れる隙なんて、どこにもないのに逝っちゃって、あなたにはお姉ちゃんしか、いないっていうのに!!」
 背を向けているため、彼の表情は窺い知れない。
 長きに亘り、秘めてきた想いは氾濫するかのように溢れだす。


 「こんな苦しいのは、もうたくさん!!いっそ、お姉ちゃんじゃなくてあたしが死んじゃえばよかった!!」
 勢いに任せ、ここまで叫ぶと、

 ぐいっ

 いきなり、腕を掴まれ向きを変えられた。

 「本当に、そう思ってんの?」








 屡薇の雰囲気は、いつにもなく険しい。

 「うううっ…っ、」
 真依は泣きはらした顔の、涙を片手で必死に拭いうと、

 「……ちがう…」

 ぽつりと、ふるえる声で呟く。


 「なら、真依さんが本当に言いたいことは何?」
 いくらか緩んだ声色で、問い詰められて、

 「……っ、う…っ、」

 俯く真依は涙ながらに、小さく告げたのだった。


 「好き、です…、ずっと、…あなたが、好きでした…、ごめんなさい、お姉ちゃん……」

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