※※第159話:Make Love(&Attachment).89
ドアを閉めると、花子と豆は尻尾を振りながらすぐにリビングへと駆けてゆきまして、
グイッ――――…
玄関で両手首を掴まれたナナは、背中をドアへと押し当てられくちびるを奪われた。
ちゅっ…
「ん…っ、」
強引なキスに早くもとろけて、彼女は躰をふるわせ、
「舌入れるから口開けな?」
くちびるがまた触れあいそうな距離で、薔はふっと囁く。
「……っ、は…っ、」
ナナはおもむろに、従い、
「今からそんなにエロい顔すんなよ…」
妖しく笑った彼はさっそく、ディープなやつでキスを再開した。
くちゅっ…
「ん…っふ、ん…っ、」
入れられた舌と、伸ばす舌、動きは卑猥に合わさってゆく。
薔はいやらしい手つきで、掴んでいた手首を腕へと愛撫して、
「……っん、っ、」
ガクンッ…
思わず腰が砕けたナナの躰は、支えるように抱きしめられた。
――――――――…
「さすがにこの内容じゃ、警察は無理でしょ、真依さんもなかなかやるね?」
屡薇はあっけらかんとして、幾枚かの紙切れを破り捨てると、
「まぁ、やられてもおかしくねぇ事してるし、俺は…」
自嘲気味に笑った。
胸が切なく、締め付けられる。
ぐっ…
震えに気づかれないよう、真依は強くバッグを掴むと、
「これを…、渡しに来たんです…」
一通の封筒を差し出し、冷たさを装い言ったのだった。
「お姉ちゃんが、遺した手紙…」
「え?」
それを受け取った屡薇は、ちゃんと彼女の微かな震えに気づいていた。
「お姉ちゃんは、もしかしたら自分が死ぬかもしれないと、何となく…、わかっていたみたい…」
真依は小さく続ける。
姉の祥子が、売れないバンドマンの友達として彼を紹介した瞬間から、真依はずっと屡薇に想いを寄せていたのだ。
その想いは日に日に強まるばかりで、祥子の彼氏になってからも、姉が亡くなってからも想いは断ち切れずにいた。
それがとうとう今日限りだと、言い聞かせる真依の心は自分を保つことで精一杯だ。
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