※※第159話:Make Love(&Attachment).89







 ピンポーン

 チャイムが鳴った。


 「やべ、きっと薔ちゃんだ、花子ちゃん誘拐したとか思われたら俺どうし」
 「ワンッ!」

 屡薇はちょっと慌てたが、真っ先に鳴いた花子は尻尾を振りながら玄関へと向かって駆け出し、

 「花子ちゃん待ってってば、今作戦考えるから、」
 「ワン(※おいかけっこすき)♪」

 屡薇と豆も後を追う。





 ガチャ――――…

 そして部屋の主が辿り着くより一歩早く、お利口さんにドアを開けた花子は外へと飛び出し、

 「ん、」

 ぎゅっ…

 屡薇には真依が突き付けられていた。






 唖然とする屡薇に、思わずくっついちゃった真依は真っ赤となって、

 「後はお前が何とかしろよ?」

 ひょいっ

 尻尾をぴこぴこ振っていた豆を抱き上げた薔は、屡薇へと言い聞かせてからドアを閉めちゃいました。

 バタン――――…








 「ワンッ(※おかえりなさいませ)♪」
 花子は大喜びで、ご主人さまへと飛びつき、

 「おおお!薔っ、よくわからないですけどもんのすごくかっこいいです!」
 「おまえそれ褒めてんのか?」
 「ワン♪」

 さんにんとたまに豆サイズは仲良く、隣の部屋へと帰っていったんだとさ。















 「えーと…、あの、真依さん?」
 ほどなくして、屡薇は控えめに声を掛けた。

 はっ!とした真依は、素早く彼から離れると、

 「帰ります!」

 すぐさまドアを開けようとした。


 「ちょっと待ってよ!」
 屡薇はすかさずその手を掴むと、

 「俺、真依さんに聞きたいことがあったんだ、来て?」

 部屋のなかへと向かいだす。





 真依は気が気じゃなかった。
 掴まれた手から、熱や鼓動やずっと秘めていた想いが、伝わってしまったらどうしようと。



 それにはお構いなしにか、リビングまで真依を引っ張ってきた屡薇は、

 「これ、」

 何枚かの紙を見せ、問いただしたのだった。

 「犯人は真依さんでしょ?」








 “人殺し”
 “新曲の発売は中止しろ、さもなければ…”

 どう見てもそれは全部、脅迫状である。


 「ごめんね、すぐにわかった…」
 と、屡薇は小さな声で告げて、


 「……警察にでも、突きだしますか?」
 真依はつとめて、皮肉な笑みを浮かべて言った。

[ 471/540 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る