※※第159話:Make Love(&Attachment).89






 「お腹いっぱいになりました、ごちそうさまです!」
 レストランを後にしてから、ナナはぺこりとあたまを下げ、
 「あっ、そうだ!わたしガム持ってました!」
 ふと思い出し、なんだか美味しそうだったので以前彼に買ってもらったキシリトールのガムをふたつ取り出すと、

 「おひとつどうぞ!美味しいですよ!」

 ひとつを彼へと差し出した。


 「ありがとな、」
 薔は笑ってそれを受け取る。

 「えへへ、」
 はにかみ、ガムを口に入れ噛み始めたナナさんは、

 ぐいっ

 「んんっ?」

 いきなり、強引に手を引かれ路地へと連れ込まれちゃいました。








 何事かと思っているうちに、陰となったそこで建物の外壁へと背中を押し当てられる。

 そして片肘を壁へと突いて死角を作った薔は、ガムを口に入れ少し噛むと、

 チュ――…

 覗き込むようにしてくちづけてきた。


 「ん…っ、」
 触れ合うくちびるがやわらかく、あたたかくて、甘い匂いと共にキスはほんのりミントの香りがして、

 「あ…のっ、ここっ…外っ、ですけど…っ、」

 ちょっとだけくちびるが離された隙に、頬を火照らすナナは思わず俯こうとした。


 グイッ――――…

 「ぁ…っ、」

 ところが、すぐに顎を掴んで上へと向けてしまうと、

 「そういう意味じゃねぇのかよ…」

 薔はフッと笑ったのだ。




 ガムのことですか…と、かろうじてと言えども、ナナにしてはよく気づけたもので。

 「俺はまだ、おまえを食ってねぇんだぞ?」
 キスは、続行されました。

 「帰るまではこれで我慢してやるんだ…偉いと思わねぇか?」







 ちゅっ…

 「……っ、ん…っ、」

 舌は絡めずに、何度も触れあわせるくちびる。
 顎から頬へと、彼の手はしなやかに肌を撫でてゆく。


 喧騒など、これっぽっちも届かない、ここはふたりだけの世界となって、

 もっとずっと、触れてほしいと、切なく願うことをナナは止められずにいた。

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