※※第157話:Make Love(&Endearment).88







 「なんかこうやって、さんにんでお出かけも楽しいね!」
 モール内のカジュアルなレストランにて、ドリンクを手に愛羅は笑いながら言いました。

 「そうですね!」
 「そうですねぇぇ。」
 ナナとこけしちゃんも、はしゃいで返します。





 「でもナナちゃぁんはぁ、お許し出してもらわないとねぇぇ?」
 「恥ずかしいよ、こけしちゃん!」
 こけしちゃんはナナをからかい、

 「あたしも羚亜くんに、束縛してもらいたいなぁ…」

 愛羅は瞳を輝かせた。


 「そくばく…?」
 またまたキョトンのナナさんは、今度はおもむろにバッグから辞書を取り出し、

 「えーと、そくばく…、そくばく…」

 引き始める。



 「ナナちゃぁんはほんとぉぉ、辞書が好きねぇぇ。」
 「偉いねぇ。」
 にっこにこのこけしちゃんと、そんなこけしちゃんに若干口調を合わせてしまった愛羅は感心し、

 「あ、あの…、わたしが好きなのは辞書じゃなくて…あの、その…」

 ナナはもじもじと口ごもった。




 ……なるほどぉぉ。
 なるほどぉ!

 ふたりはそのもじもじさから、いろいろ悟った。



 「三咲さん偉いぃ!」
 「ナナちゃぁん、言わなくても大丈夫だよぉぉ?」
 「えええ!?」
 さりげなくさすがなこけしちゃんの影響力よ。



 …――――“束縛”についてはどうなった!?














 ――――――――…

 う〜ん…

 とある本屋さんにて、とある女性が悩んでおりました。

 「どれがいいのかまったくわからないんだけど…」





 悩み抜いているのは、いわゆるBLコーナーにてでして、

 「だいたいあのひと、お姉ちゃんのことが今でも好きなんだからゲイじゃないよね…」

 真依はしばし、腐的な世界の前をウロウロした。

 「でも、お姉ちゃんを失った反動でゲイに走ったのかも…」





 真依のバッグでふと、何かが小さく煌めいた。
 それは、“FeaR”のロゴが入ったキーホルダーで、

 「わからない…、ゲイの心境がわからないからせめて勉強したいんだけど、どれがいいのかさっぱりわからないよ…」

 彼女はやや途方に暮れた。
 どうしてこの場にこけし姉さんいなかったのか。



 「う〜ん…」

 いくつか手に取ってみようと思ったけれど、なかなか勇気を出せなかった真依は、

 「だっ、だいたいさ、あんなきれいなひとが男なわけないじゃんね…!どう見ても女だもん…!大丈夫だよあたし…!」

 と、自分に言い聞かせてから、ひとまず雑誌のコーナーへ移動しようとしたのです。

 「何が大丈夫なんだか…」



 そう、自嘲気味にため息をついた直後、

 「………………!?」

 口をあんぐりと開けた真依は思わず本棚の影に隠れてしまった。

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