※※第156話:Make Love(&Whisper).87







 『うぐっ…ピノ太くんがいないと、おいらは何にもできないんだよぉ…』
 『泣かないでよ…ザザえもん…その通りだろうけど……』

 泣きじゃくるザザえもんを、シャイアンが慰めているためザザえもんには聞こえていない(聞こえていたとしても慰めになっていないだろ)。



 (ザザえも――――――ん!)
 ナナはかなりの感情移入で、ホロリとしちゃってる。

 二度目のジュラ紀の漂流紀なんだが、感動もひとしきりのナナさんは、不意に、

 くいっ…

 髪を耳へとかけられた。



 びくっと、躰は反応してしまう。

 隣の薔は黙って、ゆびで涙を拭ったりしてくるから、

 「あ…の…」

 どうしよう、意識がぜんぶ彼に持ってかれてしまう。



 「ん?」
 彼女の肩を抱いた薔は、反対側の涙もそっと拭って、

 ぎゅっ…

 ナナはスカートを掴んだ。






 テレビではけっこうシリアスな場面が、展開されているのだけど、

 「ま、まだ…、準備…できてませんよ?」

 控えめに彼を見て、ナナは振り絞る。


 「だったら、あんま可愛い顔見せんじゃねぇよ、」

 ぐいっ…

 顎を持って強引に、向きを前へ戻させると、

 「ガマンできなくなるだろ…?」

 薔は耳もと、囁きました。






 そうか、彼はガマンしているのか…と考えるとキュンとした。
 自分まで、ガマンできなくなりそう。



 「大丈夫…今は触れるだけだ…」

 さらっ…

 肩を抱いた手で、やさしく髪を撫でられる。

 くっつく体温は心地よく、包み込む甘い匂いにも意識は奪われてゆく。





 そしてナナは自然と、彼にもたれちゃってた。

 こんな風に、じつに甘いムードではございますが、ふたりとわんこたちの目の前で繰り広げられているのはもちろん、

 『ピノ太くんを探しに行ってくるーっ!』
 『恐竜に……食べられ…ないか、ザザえもんは過去型ロボットだから……壊されるか……』

 ザザえもんでございます!

[ 429/540 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る