※※第154話:Make Love(in Private room).86
帰りの集合時間と、なっちゃいました!
「わたくし、進級しても桜葉さんと同じクラスがいいであります…!」
とホロリとする黒熊くんを筆頭に、クラスのみんなにはなんだか感慨深いものがあったりして。
「学級委員のふたりに色々任せれば良かったな、あいつら時間通りに来るのか先生心配になってきちゃった…」
「………………。」
吉川の真面目な呟きに、1-5の皆さんは(もっと早くに気づこうよ…)とか、思ってみたりした。
それでも、皆さんの心配こそが取り越し苦労だったのか、
「あぁぁ、ナナちゃぁんたち来たぁぁ。」
特に遅れることもなく、ナナと薔は合流しました。
しかし、
「こけしちゃん…」
ほぅ…
としたナナの表情を見て、
…三咲さんナニがあったんですか――――――――――っ!?
クラスの皆さんは、真っ赤で震撼した。
けれども、
(ちょっ、直視はまずい、直視は…)
長い間クラスメートだったので、それくらいのことは悟れちゃう皆さんなのでした。
そんでもって、帰りは、
「電車だから、直帰でいいけど、みんなで駅まで歩くか!」
とりあえず最寄りの駅まで歩くことと相成りました。
――――――――…
「ねぇ、あれ、何かすごいね…」
この日街では、街頭テレビを見上げ立ち止まったりする人々が続出していた。
「すごいきれい――――…」
映し出されていたのはとあるヴィジュアル系バンドの、新曲のプロモーションビデオで、
「何ていう歌だろ…」
とか、検索しだす人もちらほら。
『さよなら 君の待つ空に 手を伸ばして 想いをすべて伝えたなら――――…』
ゆったりとした切ないメロディーに、乗せて響くは亡き恋人への想いを綴った歌詞で。
「あのひとすごいきれいだね、鳥肌立った…、女優さんかな?それともモデルかな?」
「見たことあるような気も、するんだけど…」
魅入るように、見つめていた何人かは、
「あれ?」
自然と頬を伝った涙に驚かされたようだ。
「うそ…泣けた……」
『ごめんね』
と、曲から浮き上がるかのごとく、優しく悲しく、告げられた最後の場面で、
振り向いたそのひとは、微笑みながら一筋の涙を流したのだ。
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