※※第135話:Make Love(&Lips).73






 「え、えっと、何でもないです〜、」
 どことなくぎこちなく笑って、ナナはもくもくとご飯を食べ始める。

 (…………あれ?)
 せっかくいいとこまでいったのに、と、屡薇はキョトン。





 「………………、」
 薔はちゃんと気づいていたのだけど、このときは何も言わずにいたのだった。















 ――――――――…

 しゅん…

 腑に落ちずにいた屡薇が帰ってからも、ナナにはなぜか元気がありませんでした。

 ソファで膝を抱え、しょげ返る。



 (ううう、わたしのばかぁ…)

 こころがズキズキ、チクチクと痛んで。


 (だめだよ、またあのひとに、嫌な思いさせちゃ…)

 ウルッ…

 しかも思わず彼女は、泣きそうになってしまったのだ。











 「ナナ、」

 ふと、隣より、穏やかに名前を呼ぶ薔の声は響いて。


 「薔ぅ…っ、」
 ナナは潤んだ瞳で、彼を見つめると、

 「ごめんなさぁいっ…」

 ぎゅっ…と抱きつき、涙ながらに伝えた。

 「わたしっ、出てほしいって、思っちゃいましたぁ…っ、薔がっ、ひどい目に遭ったこと、知ってますのにぃ…っ…」

 と。










 「だから元気なかったのか?」
 「はいぃ…」

 抱き返して、薔はそっと彼女のあたまをよしよしする。


 そして、

 「バカだな、おまえ、」

 やさしく言ったんです。

 「それはとっくに、おまえと克服したろ?」









 「…グスッ、そう…ですけど…」
 「だから気にすんな、おまえの泣き顔はすげえ可愛いけどな、」

 ちゅ…

 「ん…っ、」

 涙をゆびで拭いながらおでこにキスをされて、ナナはぶるりとふるえる。


 「それに、俺は一つ知れて良かったぞ?」
 ゆっくりくちびるを離した薔は、頬を挟んだまま彼女を見つめると、

 「何だかんだでおまえ、リアルだと嫌がるんじゃねぇか、」

 大胆不敵に笑った。









 ……かぁぁぁあっ

 瞬く間に、真っ赤になるナナ。

 そりゃいつも、こけしちゃん小説では、喜んで(悦んで?)るもんね。






 「もう一度、聞かせろよ…、俺はおまえの何だって?」
 ちょっとイジワルに、でも甘く、薔は促して、

 「えっと…」

 すでにぽわんとしていたナナは、もじもじと応えました。

 「薔は…、わたしだけの、大好きな…彼氏、です…」

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