※※第124話:Make Love(&Lewd).65
「あっ!ナナちゃん!いらっしゃ〜い!」
レジでは、店長さんが明るく接客をしていた。
「こんにちは!」
ナナは店長さんに挨拶をしたが、薔はやけにグイグイと彼女の手を引いて歩いていってしまう。
「あの、ちょっとお話だけでも、」
「おまえ、欲しいモンはあんのか?」
…………えっ?いいんですか?
「えっとですね…、」
ドリンクの選び倒しに、取りかかるナナ。
でも明らかに薔の様子は、おかしいんだよね。
会計はいつものように、薔にお任せであるが、
「店長さん、今日は忙しいですか?」
レジの前へ堂々と立つ彼の後ろから、ナナはひょこっと顔を出した。
「おい、」
薔は制止しようとするが、
「忙しいのよ、土曜日だからね、」
店長さんは相変わらず呑気に、明かしました。
「ほんと困ったときには、ナナちゃんに働いてもらっちゃおうかな、わざわざ今日挨拶もしていただいたし!」
「わたし、今日挨拶に来ましたっけ?」
ナナはキョトンとし、
「違う違う、ナナちゃんじゃなくってね、目の前の、」
笑いながら店長さんは、薔を見た。
“それ以上喋ったら、殺す。”
と、視線が言っていた。
…………ひぇぇえ!
「おおおお会計を申し上げます!」
「…あぁ。」
薔は視線で、店長さんを牽制しており、
「………………、」
黙って彼を見上げるナナは、もうなんとなくわかっちゃってた。
もぐもぐ…
更なる帰り道で、ナナは歩きながら肉まんを頬張っていた。
「あのぅ…、」
「なんだ?」
そして尋ねてみた。
「花子ちゃんのお散歩中に、行かれたんですか?」
と。
「…俺は昨日、挨拶もしなかったからな、」
薔はちょっと、気まずそうに返す。
「でも、だったらわたし、拗ねませんでしたのに…」
とか言いながら、ナナは口を尖らせ、
「ふーん、そうか、」
薔は笑って彼女を見た。
「なら、言わなくて正解だった。」
ナナは口を尖らせたまんま、真っ赤になって、
「あと、先ほどは、ありがとうございました…」
そのまま、バスケのときかばってもらったことへの、礼を述べた。
「何のこと言ってんだ?おまえは、」
こう聞き返してきた薔は、当たり前のことだとしか、思っていないのでね。
(なんか、ずるいです…)
ナナはますます、赤面したが、
「た、食べますか…?」
肉まんをもじもじと、彼へ差し出した。
「そうじゃねーだろ?あーんって言えよ。」
「はっ、恥ずかしいですよーっ!」
2月だけど、こうやってふたりで歩いていると、
繋いだ手と手から、
伝わるんだな、あたたかさが。
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