※※第123話:Make Love(&Petting).64







 (うわぁ、今日は星がキレイだなぁ…)
 そんなことを考えながらナナは、薔と手を繋いで家路を歩いておりました。


 すると、

 「なぁ、ナナ、」

 ふと立ち止まって、薔が言ったのです。

 「今夜は星が、キレイだぞ?」

 と。




 目をぱちくりさせたナナは、すぐに、

 「わたしもそれ、思ってましたよーっ!」

 はしゃぎだす。


 「だろーな、」
 薔は赤くなった、彼女の鼻をゆびで摘まむと、

 「そんな顔してた。」

 微笑んだ。





 ……はわぁぁあ!

 鼻以外もますます、真っ赤となったナナは、

 「やはり、薔はっ、ひょうろうりょふは」

 ちょっとお決まりの台詞、それつまり超能力を疑おうとした。



 そのとき、

 スッ――――…

 鼻からゆびは離されたが、

 ちゅっ…

 くちびるにはくちびるが触れていて。




 やさしく短いキスだったが、星空の下立ち尽くすナナからくちびるを離すと、

 「おまえな、」

 そのあたまを撫で、大胆不敵に笑う薔は告げました。

 「ほんとにそんなん使えたら、俺はとっくに、おまえを閉じ込めて何処にも行けなくしてるよ。」















 ――――――――…

 ぽーっ…

 夜道で突然のキスに、ナナは帰ってからも火照っておりました。


 (そうだよ…、ということはあのひとはやっぱり、超能力が使えるんだよ…)
 そして、ぽーっとしながら答えを導きだす。


 ……だってわたしとっくに、どこにも行けなくなってるもん……





 “ナナちゃん、もうすぐご主人さま、後片付け終わるわよ?”
 ファァと欠伸をした花子は、尻尾をゆったりと振りながらおやすみに向かいました。







 閉じ込められているわけではないのに、自由ながんじがらめで、決して離れることができない。

 だとすると、これは、超能力より遥かに手強いものなのか。






 そんなことを考えながら、ソファにてナナがたいそうぽーっとしておりますと、

 ギッ…

 ふいに、隣よりそっと、髪を耳へ掛けられた。

 「何考えてんだ?」





 囁きのような声は、すぐ耳もとで響いて、

 「……っん、」

 ナナはゾクゾクと、ふるえる。


 「すみません…、お片付け…」
 「おまえはバイトしてきたろ?気にすんな、」
 耳にはあたたかい、吐息が触れる。

 ぬくもりも、いい匂いも、やさしくすべてを縛るようで。





 「は……」
 息を上げずにはいられなくて、恥じらってしまうナナは、

 「あ…の…、」
 「ん?」

 やっとのことで、尋ねてみた。

 「今は、何を…考えてるのか、わからないん…っ、ですか…?」

 と。





 「俺に都合のいい答えしか、浮かばねぇな、」
 耳にくちびるがちょっと触れて、薔は笑う。


 「……あっ、…た、例えば…?」
 瞳は潤み、荒くなる息と共にナナはつづけて、

 「例えば?…そうだな、」

 ゆびの背で頬を撫で、彼は囁いたのだった。

 「抱いてほしい、とか…」

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