※※第123話:Make Love(&Petting).64
「はい…?」
ナナは、キョトン。
「あんたの大事な彼氏を、あの男の餌食にしねぇためには……」
お構いなしに屡薇は何かを、口にしようとした。
まさにそのとき、
ぐいっ――――――…!
ナナはものすごい勢いで、肩を抱かれたのだ。
「ったく、油断も隙もねぇな、てめえは。」
とてつもなく険しい雰囲気で、薔は言い放つ。
「また拉致ろうだなんて、思っちゃいねぇよ、」
屡薇は少し、笑って返す。
ナナは男が言いかけた、その内容がひどく気になっていた。
「…まぁ、帰ってくんのは3月みてぇだから、焦ることは、ねぇか、」
静かに告げた屡薇は身を翻し、店を後にしたのでした。
(ナナちゃん、少女漫画の主人公みたい…、すごい…)
漫画じゃないんだけど、ホロリとする店長さんは相変わらず呑気。
「あの…、」
ナナはおもむろに、口を開いた。
そして、気づいたのだ。
黙って肩を抱く薔の手は、微かに震えていた。
だからナナはそっと、その手を撫でようとした。
ところが、
「…邪魔して、悪かったな。」
手を離し、彼はふぃっとドリンクコーナーのほうへ歩いて行ってしまった。
掃除のことを言ったのだと、ナナにはちゃんとわかっていた。
「いえ…、薔なら全然大丈夫です…」
聞こえてはいなかったが、きちんと言葉にしてからナナは続きに取り掛かる。
気づくと最終日のバイトは、もうすぐ終了の時刻だったが。
――――――――…
そして、本日を持ちまして、
「ナナちゃん、ほんとうにお疲れさま〜!」
一波乱だけでなくあったナナのバイトも、終了でございます!
「ナナちゃん、困ったときはいつでも言ってね、働いてほしい…」
「店長さんっ…!」
ふたりは熱き握手で、ヘルプの約束をし。
「そうですよ〜、チーフ!」
「随分と遠くですね…」
後が怖いため、元チーフは離れたところからホロリとご挨拶。
やがて、
「またいつでも、お買い物には来てね〜!」
「はいっ!ありがとうございました!」
あたたたく見送られ、ナナは店を後にしたのでした。
「もういいのか?」
最終日なので気を利かせた薔は、外で待っていた。
「はいっ!」
元気よく返事をすると、ナナは彼へと駆け寄り。
「そうか、」
そっと手を差し伸べた薔は、微笑んで、言いました。
「ナナ、お疲れさま。」
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