※※第121話:Make Love(in Splash).62






 『ピノ太くんのホットケーキ、ほんと美味しい!ほんと大好き、ピノ太くん!』
 『ザザえもん、それ言われても僕、鳥肌が立つだけなんだけど、』
 食卓で向かい合い、ザザえもんとピノ太くんはなかなかいい雰囲気。
 なのか?




 「…こんなジャンルだったか?」
 薔はどことなく、呆れ気味といいますかで。

 「あっ、ここではまだわかってませんけど、ザザえもんはほんとうは、女の子だったんです!」
 ナナは彼を見て、元気よく説明した。


 「………………、」
 一瞬、薔は無言になったが、

 「まさかとは思ったが…、コイツが、女?」

 テレビをちょっと怪訝そうに、見つめたのである。



 「すげえでこぼこしてんぞ?」
 「でこぼこなのがザザえもんの、いいところなんですよっ、」
 ……え?ほかには、ないの?

 「一人称からしておかしいだろ、」
 「“いちにんしょう”って、なんですか?」
 「辞書引けよ。」
 「そうでした!」
 ここでナナはさっそく、辞書を取り出してきた。


 「えーと、」
 再び隣に座って、ページをめくる。







 いち‐にんしょう【一人称】
 自分または自分を含む仲間を指示する人称。「われ」「私」「われわれ」の類。自称。





 「なるほど!これは初めて、わかりやすかったです!」
 辞書を引いて理解できたことに、大感動のナナは、

 「えっと、ザザえもんの一人称は“おいら”ですけど、最近は大好きなピノ太くんさんの言う事をちゃんと聞いて、“わがはい”も使うんですよ!?」

 はしゃぎながら、隣を見た。





 「ふーん、」
 ナナを見ていた薔は、なぜか穏やかに笑っていて、

 「どちらにせよおかしいんだが、」

 ふわ…

 彼女のあたまをなでなでしながら、やさしく言ったのです。

 「まぁ、おまえが言うなら、女なんだろうな、」







 きゅん…っ

 「はい…」

 ナナは心底、ときめいた。


 「なんか、とてつもなくお優しい雰囲気なんですけど…、どうなさったんですか…?」
 「それよりおまえ、観なくていいのか?」
 手の離されたあたまが、心地よくてくすぐったくて仕方ないナナは両手をそっと乗っける。


 「あっ、そうでした、」
 そしてその体勢のまま、改めてテレビへと向いた。

 「エヘヘ…」



 薔はテレビというより、愛おしそうに彼女を見ている。




 “ザザえもんのことをまったく言えない、ナナちゃんなのでございます♪”
 花子よ、説明ありがとう!

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