※※第92話:Make Love(&Drop).38






 「いつもよりちょっと、早く着いちゃいましたね!」
 「そうだな、」

 どうやら、変なのの相手をしていたわりには、ナナと薔はいつものコンビニにいつもより早く到着した模様です。



 ところが、

 「どーした?行かねぇのか?」
 「いいいや、あのですね…」

 彼とまだ手を離したくなかったナナさんは、もじもじと渋ったのだ。





 「………………、」

 ぐいっ

 「え…っ?」

 こころは見透かされちゃったようで、いきなりナナは強引に手を引かれた。



 そのまま薔は、ちょっと人目にはつきにくい影になった場所へ彼女を連れ込むと、

 タンッ――――…

 壁にその背中を押し当て、


 ちゅっ…

 キスをしてきた。




 「……っん、」

 彼は壁に片方の肘を突くようにしているため、くちづけは見事に死角となっております。


 頬やなんかもそっと撫でられ、何度かやわらかくくちびるを重ねた。






 「は……」
 ほどなくして離されたが、これだけでナナはだいぶ火照ってしまい、

 ちゅ

 一度離れてからも、薔はやさしく短くキスを落としたのだった。





 ぎゅっ…

 大好きな匂いに目眩すら覚え、ナナは彼の制服をちょっとだけ強く掴むと、

 「あの…、」

 俯きながら、小さく言いました。

 「離れるのが、嫌に、なっちゃうんですけど……」





 「おまえ、これからバイトだってのに、すげえ殺し文句だな、」

 おでこにもキスをすると、薔は少しだけ笑って返した。


 「離れるわけじゃねーだろ?その証拠に俺はいつでも、おまえのことばっか考えてるよ。」

















 これは、殺し文句に殺し文句で返された気がしなくもないが、

 「あっ!ナナちゃん、今日も早いね!」

 隠れてキスしていた(されていた?)ナナは店内入りし、本日は共に店をまわす店長さんが満面の笑みでご挨拶です。


 「おっ、おはようございます…!」
 ナナはいそいそと、奥へお着替えに向かいまして。



 「やだ、ナナちゃん、風邪でも引いたのかな?何か火照ってるみたいだったけど、」
 店長さんは心配そうに、こんなことを呟いたのでした。

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