※※第120話:Make Love(&Jealousy).61






 「あああ、わたしってすごく、しあわせだな……」
 ナナはソファの背もたれに、頭を預ける。

 そして気づいた。

 (そもそもわたし、反応してほしかったんじゃないし…、あのひとにただ、笑ってほしかっただけだし…)


 …それにあのひと、あれだけ女の子に騒がれても、わたしだけ、見ててくださるし……





 …………ポッ

 頬を赤く染めたナナは、バスタオルの袋を抱きしめる。


 (ちがうちがう!わたしはできれば、薔を抱きしめたいの!)
 すぐにバスタオルは離すと、

 (うぎゃあああ!恥ずかしいけど事実だもーん!)
 ナナは真っ赤っかになって、一人悶えた。



 チラリ…

 隣に並んでいる、バスタオルの小さな山を見つめる。

 そんでもって、

 「よし!どこかに隠そう!」
 意気込んだナナは、さっそく行動に移した。



 「と言っても、どこに隠そう?」
 腕を組み、リビングを見渡す。



 テレビの裏→狭い
 ソファの下→入りきらない
 ベランダ→寒い
 ピノ太くんの後ろ→ベストだが支えきれるか


 ということから、

 「ああっ!ここだ!」

 テーブルの下へ、隠すことにした。






 よいしょ

 いくつかの山にわけて、積み込む。

 「う〜ん…、滑ってくるんだけど…、どうしてだろう…?」
 ビニールの袋に入ったまんまなんだから当然だよ、というお話のなか、一所懸命にナナが押し込んでおりますと、

 「おい、」

 頭上より、堂々とした声を掛けられた。

 「何やってんだ?おまえは、」





 ………………ぎくぅ!

 としたナナは、湯上がりの薔を見上げ、

 「お、おかえりなさいませ!」

 かしこまった。




 「……あぁ、」
 まだ髪が濡れている薔は、ソファにふんぞり返る。

 ちょこん

 ものすごく控えめに、ナナも隣に並びます。




 すると、

 「なぁ、」

 静かな雰囲気で、薔は問いかけてきたのだ。

 「おまえ、バスタオルはどこへやった?」






 「え、えっと…、」
 ナナは恥ずかしそうに、応えた。

 「テーブルの下に、隠し…ました……」

 と。




 「あぁ、だろーな、」
 雰囲気変わらず、薔は言った。

 「ほとんど見えてる。」
 「そ、そうでしたね…」






 そうこうしているうちに、

 ズザァ――…!

 「あああっ!」

 ますます滑り落ちてきた。



 「なぜにこんなにも、滑るんですかね!?」
 ナナは慌てて、再び隠そうとし、

 「…………フッ、」

 薔は堪えきれず、笑いだした。




 「んあーっ!」
 再び隠すのはそっちのけで、ナナはソファに飛び乗る。

 「やっと笑ってくださいましたーっ!」
 「おまえが可愛すぎるからだろ?」

 …………えええ!?





 じつは難しく考えなくても、そのまんまでいれば彼を笑わすことはできたのであって、

 「はぁ……」

 ふと、落ち着くように深く呼吸をした薔は、ナナを見つめて告げたのでした。

 「ごめんな?」

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