※※第115話:Make Love(ClimaxW).57







 「ででででできた!」

 土鍋を覗き込み、感極まったナナは思わず泣きそうになった。

 “どれどれ、”
 ある意味ご主人さまの命も若干かかっておりますので、花子も念入りに最終チェック。



 はい、おそらく黒いのを作るほうが難易度高いでしょうが、今度はオーソドックスに白いお粥が完成しました!



 「良かったよーっ!」
 「ワン!」

 喜び勇んだ乙女たちは、さっそくお盆に乗せて寝室まで運んでいったのです。














 ――――――…

 「…白い粥を見て感動したのは、生まれて初めてだな、」

 と言って笑っている薔は、熱があるためかやはりかなりだるそうで。

 「良かったですよ、ほんと!」
 ナナは進んで彼に食べさせながら、自分も同じものを食べていたのだけど、


 「……っぐ、うぇぇ……」

 ふと、堪えていたものが一瞬で溢れ出すかのように、ポロポロと泣き始めた。




 「どーした?」
 薔はやさしい声で、彼女の顔を覗き込む。

 「こんっな大変なときにっ、わたし、ごめんなさぁい…っ、」
 ナナは次々と涙を零しながら、俯いて肩をふるわす。




 「おまえは悪くねぇだろ?」
 そっと抱きしめた薔は、背中をさするように撫でて。

 「グスッ…、でもぉ…っ、」
 ようやく包まれた大好きな匂いに、ナナの胸は張り裂けそうなほど締め付けられたが、

 「大丈夫だよ、おまえがちゃんと、帰ってきたからな、」

 笑って告げられたこの言葉に、しばし言葉を失った。









 止まるはずのない息も、

 止まるはずのない鼓動も、

 愛おしさにくるしくなると、なぜか止まりそうになる。


 だからわたしはこのひとのために、

 息をして、胸をふるわすんだ――――――…







 居場所はそこにあった。

 どこにいても、ここにいたと、

 痛いほどに想い知らされる。

[ 358/538 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る