※※第115話:Make Love(ClimaxW).57







 「おかえり…」

 抱きしめながら耳もとで、そっと薔は言葉にします。


 「ただいま…です……」
 あまりの切なさと幸せに、ちょっと俯いたナナは彼の手をぎゅっと掴んだ。




 そして、

 「…あれ?」

 気づいたのだ。



 「えっ、そんな、」
 「どーした?」

 結局、薔の腕やなんかを触りまくったナナさんは、

 ぴと

 最終的におでこへと触れてから、

 「お熱出してらっしゃいますけど――――――――――っ!」

 慌てまくった。





 「あぁ、そういやそうだったな、」
 薔はまるで、今思い出したかのようですが、

 「だだだだ暖房!あっ、頭を冷やすのはこちらに!あれぇ!?花子ちゃんはどうなさったんですかぁーっ!?」

 青ざめたりしながら、非常にわたわたしているナナを見て、

 「……フッ、」

 とうとう彼は、笑いだした。






 「いや、あの、すみません…、でも花子ちゃんが…」

 ナナのリトマス紙状態が、お久しぶりに見れたところで、

 「ワンッ!」

 目を覚ました花子が、尻尾をフリフリ元気よくソファを飛び下りた。

 ぴょん





 「花子ちゃ――――――ん!」
 「花子、ありがとな、」

 ふたりして花子を、なでなでしていると、

 「おい、俺の手ばっか撫でんなよ、」
 「わたくしこれでも、花子ちゃんを撫でてますけどーっ!って、お願いですから休んでてくださいよーっ!」
 「あ?」

 やっぱりちょっと複雑な状況だかになって、花子はとっても嬉しそうにゆったりと尻尾を振るのでした。





 そんでもって、なでなでの最中、

 「そういえば、こちらを薔にお返ししないとです!」

 ふと思い出したナナは、コートの左側のポケットから例のキーホルダーを取り出し、彼へと差し出した。

 「すみません、わたしがお預かりしておりました!」







 それを受け取った薔は、笑いながら言いました。

 「なんだ、こいつのことか、」






 「あああ、やっぱり組み合わせが何とも、可愛らしいです!」
 「写真は撮んなよ?」
 「えーっ!?」






 にぎやかさとあたたかさが戻って、安心しきった花子はトロンとした目つきで窓の外を見つめる。

 そして、とある人物へと、感謝の言葉を贈ったのだった。


 “なかなかやるわね、ありがとう鼻おじさん!”

[ 355/538 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る