※※第115話:Make Love(ClimaxW).57







 「……ナナ?」

 薔は深く目を開き、

 「すみません!遅くなりました!」

 彼に向かってペコリとあたまを下げたナナは、

 キッ

 と竜紀を見据え、叫びました。

 「わたしの大好きな薔に、何てことするの―――――――――――っっ!」

 おーっ、ぉーっ…(※怒髪冠を衝くエコー)








 「まだ何もされてねぇがな、」
 「おおおっ!それは本当に良かったです!されてたら絶対に許しませんけど!」

 とまあこんな風に、竜紀を前にしてもふたりはいったんふたりっきりの世界に入っちゃいましたが、

 「ねぇ、それなら、キミでいいよ、」

 気づくと、竜紀は鋭利な爪を剥き出しにしており、ナナへ向かって問いかけたのだ。

 「薔の代わりに、ぐちゃぐちゃになってくれる?」













 「ならないわ!」

 ナナはこれでもかというほど勢いよく、即答だった。


 それには、痛いほどに思い知らされた、色んな想いがあって、

 「だって、わたしがぐちゃぐちゃにされちゃったら、薔だって痛いもの!」

 暴れ出しそうな怒りを静かな闘志に変え、ナナははっきりと返したのだった。


 「だからわたしは、あんたなんかにぐちゃぐちゃにはされずに、このひとを全力でお守りするのよ。」















 「いい覚悟……」
 竜紀はナナへと、爪を突き立てようとした。


 当のナナはびくともしないが、薔は彼女をかばおうと、瞬時に動いた。






 ところが、

 「…………あれ?」

 竜紀は顔面蒼白となり、ひどく苦しげに喉元を押さえたのである。






 ゼェゼェと息をしながら、唖然としているナナを見上げ、

 「ねぇ…、左側の、その子、なに?それ……」

 冷や汗すらかいている竜紀は、微かに笑いながら問いかけて、




 崩れ去るように忽然と姿を消した。















 「消えた……」

 何が起こったのかと、ナナはキョロキョロしていたのだけど、

 ギュ――――…

 ふと、後ろからやさしく、抱きしめられていた。

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