※※第115話:Make Love(ClimaxW).57







 やがて、

 「12年前、確かにあんたは、底知れねぇ恐怖と苦痛を俺に植え付けた、」

 薔は力強く、諭し始めた。


 竜紀は黙って、彼を見つめる。






 「何度も夢に魘されて、思い出すだけで苦しくて吐き気がしたよ、」

 瞳を細める薔は、苦しみ続けた歳月に思いを馳せるかのようで。


 しかし、

 「だがそれは、気づいてみると容易いもんだった、」

 とたんに強い眼差しとなり、彼は堂々と言い放ったのだ。


 「あんたが押し付けたあんなもんなん、全てであいつを護ると誓ったあの日、」








 「雨に流して捨てたんだよ。」












 もはや今では、竜紀が黙り込んでいて、

 「何が邪魔者だか知んねぇが、真の邪魔者なら今俺の目の前にいんぞ?」

 ギュ――――…

 掴んだ手をまるで握りつぶすかのよう、不敵に笑って薔は言ったのでした。


 「俺はあいつのためにしか血を流さねえ、だからこの部屋は、何色にも染まんねぇよ。」

















 『恐怖も苦痛も、

  跪け、

  限りなく深い、愛に。』




















 黙っている竜紀から、手を離した薔は花子を抱きかかえる。


 そのまま彼はソファまで歩いて、ふわりとやさしく花子を寝かせたのだった。






 「……いい表情だ、」

 呟いた竜紀は、ニヤリと笑い、

 バッ――――…

 背後から、花子を撫でている薔へと襲いかかる。





 ガッ…!

 すぐさまその手を、力強く掴んで、

 「なぁ、」

 流れるように竜紀を見て、薔は告げたのだった。

 「俺は今、女の帰り待ってんだ、」










 ギリ…

 ゆびは腕に、食い込むほど強く、

 「だからここで、てめえに、」

 真っ直ぐ竜紀を見据えた薔は、切り裂くかのごとく言葉にした。

 「犯られるわけにはいかねーんだよ。」














 無言の、直視。



 そんななかだった。




 「薔に触らないで――――――――――――っっ!!」



 ド――――ンッ!


 明らかに腕を掴まれていたのは竜紀のほうだが、怒りの雄叫びを上げたナナが、力任せに男の体を突き飛ばした。

[ 353/538 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る