※※第115話:Make Love(ClimaxW).57






 「お前が欲しいのは、愛じゃねえだろ?」
 屡薇を離したとき、夕月はただ穏やかに笑っていて、

 「だからお前がどうしても、愛を奪うっつうなら、」

 少し見下ろしながら、ライトを背に続けたのでした。

 「お前が本当に欲しいもんを、俺が根こそぎ奪い取ってやる。」









 それは、彼にとってすれば、造作もないことで、

 キュ…

 くちびるを噛み締めた屡薇は、キーホルダーと携帯を、

 ぽとんっ

 ナナの手のうえへと、乗せたのだった。





 ぎゅっ

 大事に抱きかかえるようにして、ナナはステージを飛び去った。

 「夕月さん、ありがとうございます!!」
















 「やったあぁぁっ!」
 「三咲さ――――――ん!」×2


 歓喜の雄叫びを上げたこけしちゃんと羚亜と愛羅は、すぐにナナへ向かって駆け出し、

 「こけしちゃ――――――――――ん!」

 ナナも同じく、歓喜の雄叫び。








 「なんでここで、あんたが出てくんの?」

 屡薇は自嘲気味に笑いながら、目の前の夕月へと尋ねた。




 「なぁに、俺はいつでも、愛の味方なだけさ、」
 夕月は手にしていたマイクを、屡薇へ手渡すと、

 「もし、どうしても愛がほしくなったら、正々堂々と勝負すんだな、」

 悠然とステージを、後にしたのだった。


 「卑劣な手なん使っても、端から白旗上げてんぞ。」










 「大丈夫だ、お前なかなかの、いい男じゃねえか、」

 ステージを下りた夕月は、屡薇にそう微笑みかけると、まるで何事もなかったかのように会場から姿を消した。






 「三咲さんとこけしさんは、先に行ってて!すぐ行くから!」
 出口で、羚亜はいったん振り向くと、

 「今夜のことは、俺たちだけの秘密にしとかないとねっ、」

 と笑って、能力を呼び覚ますべく指輪を外して。




 「羚亜くん、かっこいい…」

 うっとりする、愛羅。





 「ナナちゃぁん、こっちぃぃ。」
 「あっ!うん!」
 ナナとこけしちゃんは、ゲートに向かってまっしぐらに駆け出しました。

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