※※第114話:Make Love(+Nightmare).56







 辺りがすっかり、暗くなってから。


 バタン――――――…

 薔は、帰宅をした。






 ナナは結局、見つからず、本日はバイトも休んだようで。



 「は…っ、」

 玄関で眩暈を覚えた彼に、ここへきてどっと熱の重みがのしかかる。






 やはり明かりも暖房もつけず、

 ドサッ…

 薔はソファへと、力無く横たわった。




 「クゥン…」

 熱冷まシートを咥えた花子が、暗闇の中潤んだ瞳でご主人さまに駆け寄る。


 「ごめんな…、花子…」
 薔はそのあたまを撫で、微笑み掛けると、

 「寒いよな…、あいつがいねぇと、俺はもうダメだな…」

 冷たいソファへ、顔をうずめ小さく言葉にした。


 「会いてぇよ、ナナ…」












 …――――ところが、悪夢に乗じ、真の悪夢は闇に紛れ込んだ。

















 カタン…

 玄関のほうで、確かな物音がした。

 「……ナナ?」

 すぐに顔を上げた薔は、熱にやられたからだでそちらへと掛けてゆく。





 「………………!」

 このとき、すべてを悟った花子は、全力で遠吠えを上げようとした。


















 玄関には、誰もいなかった。


 「………………、」

 薔は黙って、リビングへと戻る。







 カチ…

 今度はちゃんと、明かりを点けて。


 そして薔は明らかなる異変に、気づいたのである。


 「……花子?」





 花子はぐったりと力無く、冷たい床に横たわっていた。


















 ――――――――…

 (なんだろう…、胸騒ぎがする……)

 ライヴはもうすぐ始まるという頃、ナナは苦しくてくるしくていてもたってもいられなくなっていた。


 「薔…?」

 愛しいひとの、名前を呼ぶ。


 心はいつも、ここにはない。
 彼のもとにしか、ないというのに……





 グッ…

 ナナが拳を固めた、瞬間だった。



 ワ――――――――…ッ!

 大歓声の渦が、巻き起こって、

 ステージに屡薇のバンド、FeaRが登場した。

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