※※第114話:Make Love(+Nightmare).56







 昨日より熱は更に上がっていたが、朝早く起きてシャワーを浴びると、薔はナナを探しに出掛けていった。

 バタン――――…








 花子はしばらくのあいだ、凛としてお座りしていたかと思ったら、

 ダッ――――…

 奥に向かうと“あるもの”を咥え、猛スピードで部屋を飛び出していきました。


















 ――――――――…

 「夕月さん!?」

 さりげなく陰でナナを探していた夕月がオフィスへ戻る際、街中でわりと髭がワイルドめな男性が駆け寄ってきた。


 「あぁ、越谷(こしや)か、久しぶりだな、」
 「ずっとパリかと思ってましたよ、日本にいるなら連絡でもくださいよ〜!」
 越谷と呼ばれた男性は、ずいぶんと夕月を慕っている様子である。


 そして、

 「夕月さんに仕事を頂けたのがきっかけで、最近ではおれにも仕事がくるようになりました、」
 「そいつはお前の腕がいいからだろ?俺は何もしてねぇよ。」

 夕月が穏やかに微笑み、言い聞かせると、

 「でも、ほんとうにおれは、夕月さんには感謝してるんです…」

 越谷も笑って、カメラの入ったバッグへ目をやり、言ったのでした。

 「今日もこれから、最近注目のバンドの写真集の、撮影なんですよ、」







 「お前の写真にはキレがあるからな、そいつらも幸せだ。」
 「ありがとうございます!」
 夕月は優雅に、くっくっと笑うと、

 「そうだ、お前に頼みてぇことがあんだが、」

 ある画像を、彼の携帯(※大きく分けてスマホのほうね)に送ったのでした。

 「もし、どこかでこの女の子を見かけた場合は、俺に知らせてほしい。」









 「わかりました…!」

 ただならぬ事態だと悟った越谷は、力強く頷いてから夕月と別れ、仕事へ向かった。



 「…あいつはいい目をしてる、」
 フッと笑うと、夕月も反対方向へ歩き出す。



 一時間もしないうちに、また言葉を交わすことになるとは互いに思いもせずに。

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