※※第114話:Make Love(+Nightmare).56
カランッ…
血の付いたナイフは、床へと落ちた。
「名前は、知らないんだが、金髪の男が…彼女を連れ去ったはずなんだ、」
彦一は急いで、薔の肩を手当てしようとした。
ところが、
「……ナナ、」
ぽつりとその名を呼ぶと、薔はものすごい速さで部屋を走り去った。
11年前の“あのとき”に、ひどくよく似た表情を見せて。
「捕まえますか!?」
オトコらが彦一へ確認する。
「…いや、いい、行かせて…やってくれ、」
彦一は力無く、うずくまり頭を抱えた。
「おれは、取り返しのつかないことを、してしまったんじゃあ……」
――――――――…
メンバーと屡薇は、スタジオにいた。
(亡命できるような費用、今の俺には無えもんな、)
思い出して、屡薇は可笑しそうに笑いだす。
「…なんかあいつ、こえぇ、」
「だな。」
メンバーは、訝しげ。
(まぁ、そう言っとけば、諦めるかあいつも海外探し回るだろ、)
本日何箱目かの、パッケージを開けると、
(この調子で売れりゃあ、いずれバレるだろうけど、…何とかなるさ、)
屡薇は楽しげに、煙草をふかしたのだった。
――――――――…
「……グス、」
ナナは泣きながら、暗い部屋のなかで膝を抱えていた。
すると…、
トントン
と、だれかが、ドアを叩いたのだ。
「……?だれだろ?わたしが出ていいのかな?」
泣きはらした目で、ナナは玄関へと歩み寄る。
ドアスコープを覗くと、だれもいないようだったが、
ガチャ――――…
開けてみると、
「…………あれ?」
ドアノブのところに、スーパーの袋が下がっていた。
「なんだろう?」
袋に詰まっていたのは、なぜかお菓子の数々で、
グゥ…
ナナはこのときようやく、自分が空腹なことに気づいた。
「いいひとがいたものだよ…」
感心しつつも、食欲はないのだけど、ナナは袋を手にし部屋へと戻ったのだった。
夜道を、毛並みのやたら良いゴールデン・レトリーバーが、リードも付けずかなりのスピードで走っておりました。
「離れてきたのかな?」
「立派な犬ねぇ…」
たまたますれ違う人々は、振り返ったりしている。
“周りの住人が帰ってきてたから、ナナちゃんが大声出して何かあってもいけないし、明日は昼間来てみましょ、”
花子は全速力で、月の光を背にし、
“私の自慢の鼻、ナメてもらっちゃ困るんだから、”
もときた道を、駆け抜けていったのでした。
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