※※第114話:Make Love(+Nightmare).56







 「知ってる?ハーフの扱いなんてひでぇもんでさぁ、香牙とかいう便利なもんは使えねぇの。おかげで人間は怯えて喚くわで、血を吸うのも一苦労だし、」

 ソファにて、窓の外を眺めながら屡薇は煙草に火をつける。
 ナナは突っ立ったまま、話に耳を傾ける。




 「おまけに、寿命もちゃんとあんだよねぇ。」
 白い煙を吐いた後、屡薇はナナへ目をやると、

 「でもさ、あんたと期間限定のペアを組むことで、その間だけ俺はヴァンパイアとして認められんだよ。香牙で何でもし放題だし、寿命も一時、止まる。」


 そう、続けた。




 「なんで、わたしなのよ、」
 ナナはコートをつよく掴み、静かな憤りを投げ掛け。


 「あれ?やっぱ知らねぇの?」
 呆れたように屡薇は、聞き返したのだった。

 「あんた、上玉の血を何度も吸ってんだろ?」

 と。






 「そう…だけど、」
 こんな状況でも、否応なしにナナは照れる。

 すると、

 「だからあんたさぁ、もう10年以上は血とか吸わなくても、全然平気な身体になってるわけ。」

 煙草の煙を上げながら、屡薇はニヤリと笑った。

 「わかる?そんなあんたと10年間だけペアを組めば、その間俺はようやく一人前として認められるんだよ。」

















 ――――――――…

 「冗談……だろ?」

 冷や汗混じりに、彦一は尋ねた。


 「てめえが言ったんだろーが、」
 ナイフは既に、薔の肌へと食い込み、裂けた服に血を滲ませている。




 「ったく、もっと切れ味のいいヤツ用意しろよ、」
 薔は呆れながらも、そのまま突き進めようとし、

 「右が落ちる前に答えろ。…1本でいいのか?」

 切り裂くような視線で、彦一を見据えた。







 「やめてくれ!」

 彦一は叫ぶ。


 「あ?ここで止めたら意味ねぇだろ。俺はあいつの居場所が知りてぇんだよ。」
 しかし薔は、手を離そうとせず。



 「悪かった、彼女の居場所は、本当は知らないんだ!」

 そして彦一は、力の限りに叫んだのだった。


 「きっともうあの男と、空港にでもいるんだろ、アイツは彼女を連れてすぐ、亡命すると確かに言ったんだよ!」

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