※※第114話:Make Love(+Nightmare).56
「話が違ぇだろ、」
薔は勢いよく、彦一の胸ぐらを掴んだ。
「ぐっ…!」
呻く彦一に、
「…………!?」
周りにいる彼の手下達は、身構える。
ところが、それを制止したのは他でもない、彦一で、
「薔っ、目を覚ませ、あの女は…ヴァンパイアだ、」
途切れ途切れに息を吐き、言い聞かせたのだった。
「あんなのと、一緒にいてみろ、そのうち、…殺されるぞ!」
「……アンタは何も、分かってねぇな、」
静かに返した薔は、手を離す。
「ゲホッ…、ゲホッ…」
床に手をつき、彦一は咳き込む。
その頭上へと、
「あいつがヴァンパイアだってことは、はじめから知ってた、だからそんなん、俺には関係ねえ、」
薔は言葉を落とした。
「ナナは俺を殺しはしねぇが、仮に殺されたとしてもそれはそれで本望だ、そんくれえの覚悟なん、とっくにできてんだよ。」
「な、なら、こうしよう、」
苦し紛れに、立ち上がりながら彦一は提案した。
「お前の腕、おれにくれるなら、彼女の居場所を教えるよ。」
そして彦一はコートのポケットから、護身用として持ち歩いていた折り畳み式のナイフを取り出し、差し出していた。
……なぜ、人はそうするか?
それは、自分ならこの場合、諦めるより他に手はないと、思うからだ。
ところが、特にどうということもなくナイフを手にした薔は、落ち着き払って問いかけました。
「1本でいいのか?」
カシャン――――…
ナイフは銀色の刃を、剥き出す。
その刃は、何の躊躇いもなく腕の付け根へと突き立てられ、予想外の出来事に彦一は青ざめた。
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