※※第114話:Make Love(+Nightmare).56











 …――――――Why can't you love me?


 『誰よりその手に触れたい。』



   but,I can't...


















 「……ナナはどこだ?」

 彦一の屋敷まで連れて来られ、その部屋に足を踏み入れた薔は静かに、でも厳格な態度で問いかけた。


 すると…、

 「あ、あのな、薔、」

 彦一は若干冷や汗をかきながらも、振り向いて、笑いながら言ったのでした。


 「ごめん…、おれはお前を騙した。……彼女にはもう、会えないんだ。」

















 ――――――――…

 ナナは屡薇の手によって、郊外にある古ぼけたアパートへ連れ去られてきた。


 バタン――――…

 閉められたドアには後ろ手に錠がされ、寒い部屋の中でふたりきりになる。




 「…どういう、ことですか?」

 静かな怒りを内に秘め、ナナはようやく口を開いた。

 「あぁ、ペアのこと?」
 あっけらかんと聞き返して、屡薇はヒーターに灯をつける。


 「それもそうだけど…、あのっ、あのひとは無事に帰れたんですよね!?」
 とうとう、いたたまれなくなったナナは心配の声を張り上げた。





 「静かにしなよ、隣の部屋に筒抜けだからさぁ、」
 「わたしの質問に答えなさいよ!」

 そのまま、食ってかかると、

 「知る必要ねーじゃん、まぁ、連れてったのはあいつの従兄弟だから、無事に帰れたとは思うけど、」

 笑いながら屡薇は、この部屋には似つかわしくない、何だか高そうなソファに腰かけた。




 「い、従兄弟…?」
 「そうだよ、彦一ってやつ。」


 ……あ、あのときのアイツは、あのひとの従兄弟だったのか…




 思い出したくないことを思い出し、衝撃の事実も知ったナナは少し俯く。





 そのとき、

 「あんたって、本物のクセにハーフの区別もつかねぇの?」

 屡薇がまるで嘲笑するかのごとく、笑いだしたのだ。



 「ハーフ…?」

 ナナが何のことかと、眉をひそめると、

 「俺は、人間とヴァンパイアとの間に生まれた、どっち付かずの存在、いわゆるハーフってやつさ、」

 屡薇は楽しげに、話し始めたのだった。

 「虐げ続けられてきた俺が、本物としての扱いを受けられるたった一つの方法、…それがあんただよ。」

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