※※第111話:Make Love(&Love juice).53
「慎くーん、いつまで二年参りするの?おれ腹減ったあ、」
昼時まで神社やなんかを巡り歩いて振り回されている司は、膨れっ面で歩みを止めた。
「チッ、あのクソ兄貴、撒けねえな…、いい加減、司とふたりっきりにさせろよ、」
「ねえ、聞いてるのお?」
小学一年生の弟に付き添ってくれている兄に対して、すごいことを呟く慎です。
そのときだった。
「あーっ!薔兄ちゃん!」
ぱっ
歓喜の声を上げた司が、慎の手を離し駆けていっちゃったのである。
「あっ!おい司、おれの手を離すんじゃねえ!」
なな姉ちゃんてのいるんだろ!?と憤慨した慎は、すぐさまそちらを見た。
「薔兄ちゃん、ナナ姉ちゃん、明けましておめでとうございます!今年もどうぞ、よろしくお願いします!」
「あぁ。」
「司くんおめでとう!今年もよろしくね!」
ペコリとあたまを下げる司のまえには、とあるカップルが手を繋いで立っている。
…………マジかよおおお!
慎はあんぐりと、口を開けた。
「相方待ってっぞ、戻ってやれ。次見かけても声掛けんなよ?」
「はい!良いお年をーっ!」
……それは昨日までの挨拶ね。
「お前もそいつの手、しっかり掴んどけ。」
突っ立っている慎にも、不敵に微笑みかけまして。
良いお年に対しては特に指摘することもなく、なんだかもじもじしているナナの手を引いて立派に薔は歩いていきました。
(世界って意外と狭いんだな!にしても危ねえ!決闘申し込まなくてよかった!ありがとう、なな姉ちゃんとやら!)
「慎くん、どうしたの?」
かなりハラハラしていた親友に、司が駆け寄ってくる。
「なんでもねえよ、」
とりあえず慎は、呼吸を整えますと、
ぎゅうっ
司の手を、つよく握った。
「もう離すなよ?」
「うんっ!」
司はニコッと、頷きます。
(可愛いんだよ、このやろう!)
その笑顔に、キュンキュンしまくっている慎は、
「腹減ってんなら、おれが何かおごってやる。」
「えーっ!?いいよお!」
グイグイと司の手を引いて、屋台を探しに繰り出していったんだとさ。
「あれ!?慎たちは!?」
……えーと、どうやらいつの間にか、うまく撒けた模様です!
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