※※第108話:Happy Birthday(&Christmas Eve!).2






 「えーっ!?お誕生日なのに、いいんですかぁーっ!?」
 「いいに決まってんだろ、はやく投げろ。」

 ナナはまたまたびっくり仰天だが、有無を言わせぬ雰囲気に恐る恐る投げてみることにした。








 花子は嬉しそうに、尻尾を振って見守ります。


 「でででは、わたくし三咲 ナナ、本日16歳のお誕生日を迎えました大好きな薔に、このっ、雪玉を投げさせていただきます…!」
 「次から玉は省け。」







 (うーん…)

 ナナは、ここでも悩んだ。


 (お顔に当てたら、絶対にバチがあたるよ…!)
 彼は堂々と立ってますので、当てようと思えばどこにでも当てられるんだけど、

 (かといって、お洋服が濡れて、このひと熱出しちゃってもいけないし、んーと……)

 悩み抜いた挙げ句、

 (ああっ!ここだ!)

 ナナは意を決して、薔に雪を投げた!






 ぼすっ…

 「………………。」

 投げたというより、靴の先くらいに、落ちた。





 「…どこにも当たってねぇだろ。」
 「ちゃんと当たりましたよ!」
 薔の呟きに、力説するナナ。


 そんでもって、

 「どこにだ?」
 「ここですよ、ここーっ!」

 しゃがんで靴の先を、指差した瞬間、

 ぽふっ

 「ぶ…っ!」

 ナナは丸めた雪を、鼻の頭にくっつけられていた。



 見上げた薔は、ただ不敵に笑って言いました。

 「こいつがプレゼントでもいいくれぇだな。」







 「冷たいですーっ!」
 「おまえがちょうどいいとこに、来るからいけねーんだろ?」
 「ワン!」



 そのあとはもうみんなして、少ない雪でもって、雪合戦です。



















 …――サンタさんから、生まれて初めてもらったクリスマスプレゼントが、何だったのか、

 覚えていますか?


 もしかすると、サンタクロースという存在が、一番初めにくれるプレゼントというのは、

 時に、ドキドキしたり、
 時に、ワクワクしたり、
 そしてちょっと、ハラハラもするような、

 “何かを信じる気持ち”

 なのでは、ないでしょうか?


 だから、例えば気づいていなくても、

 こころのどこかではいつまでも、キラキラと、輝いているのかも。











 ……サンタさん、ありがとうございます、

 ホワイトクリスマスはやっぱり、ロマンチックでした!


 …――――ばんざ〜い!!
















 白く息を切らし、マンションの前にある公園にまで足を運んでいたのだけど、

 「わ…っ!」

 ふと、ナナの足はもつれて、

 ぎゅっ…

 ちゃんと、薔が抱きしめていた。






 「大丈夫か?」
 「あ、はい、ありがとうございます…」

 支えるようにして起こしながら、薔はナナの髪やなんかについた雪を払っていたのですが、

 ふと、視線が宙で交わって、笑いあうと、


 チュ――――…

 ふたりはそっと、くちびるを重ねたのだった。







 くるり

 花子はとっても恥ずかしそうに、尻尾を向けて、ちょっとだけ夜空を見上げて、想った。


 “ご主人さま、お誕生日、おめでとうございます♪”

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