※※第108話:Happy Birthday(&Christmas Eve!).2







 (矢部さん…?)

 ナナはキョロキョロしてみた。
 どこかに、矢部という人がいるのではないかと思ったからだ(何の呼び掛けだよ)。




 ところが、キョロキョロ2往復目あたりで、

 ぎゅうっ…

 やさしくだがめっちゃつよく、抱きしめられていた。






 ぽふんっ…

 手から離れた雪かきは、地面に落ちて少しの雪を舞い上がらせる。





 「あ、あの…」
 ナナが何事かと、思っているなか、

 「おまえ、それならそうと早く言えよ、すげえ嬉しいじゃねぇか……」

 抱きしめながら、薔は言った。







 「え…?」
 目をぱちくりさせる、ナナ。


 「でもわたし、プレゼントが…」
 そしてまだ何かを、言おうとしたのだけど、

 「おまえってやっぱ、可愛すぎるバカだな、」

 ちょっと笑って、薔は返した。

 「目に見えるモンだけが、プレゼントとは限んねぇだろ?」










 さっきまであんなにも悲しかったのに、その言葉には揺るぎなき説得力があって。


 「今日が給料日で、プレゼントもらったとしても、明日が給料日で気持ちだけもらったとしても、俺にとっては同じくれえに嬉しいよ、」
 抱きしめたまま薔は、ナナの背中をさすると、

 「でも、おまえが、給料ほとんど使っちまう予定だったなら、」

 次にはちょっとだけ離れ、残っている涙をゆびで拭いながら、微笑んだ。

 「男が廃るのを引いたぶん、こっちのが、嬉しかったな。」



 やっぱり彼は、すべてお見通しです。











 「うわ――――――ん!」

 ナナは今度は嬉し泣きで、薔へとつよく抱きついた。

 そして叫んだ。


 「16歳のお誕生日、おめでとうございまぁす!わたしは薔が、ぜんぶの世界でいっちばん、大好きですよぉっ…!」








 ぎゅ…

 抱き返して、耳もとで、やさしく彼は告げました。

 「ありがとな、ナナ…、おまえがいてくれるなら、他には何も要らねぇよ。」

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