※※第108話:Happy Birthday(&Christmas Eve!).2







 ザッ…ザッ…

 雪でもかけば気が紛れるかと思ったが、ちっとも紛れはしなかった。


 (ごめんなさい…、わたしなんで、こんなことしてるんだろう……)
 なんだかんだで泣きそうになっているナナが、考えているのは彼のことばかりで。


 …薔は、なにしてるかな…

 一緒に作ったケーキ、もう焼けたかな……










 そんなことを描いた、瞬間だった。


 「おい、ナナっ、」









 彼の声がして、見ると薔はコートを手に、こちらへ走ってくるところだった。


 「おまえは、ちっとも来ねぇと思ったら何やらされてんだよ、」
 雪のなか、白い息を吐きながら薔は駆けてくると、

 「体冷えちまうだろ?」

 ふわっ…

 手にしてきたコートを、ナナに羽織らせたのです。







 ……ダメですってぇ、

 今、そんなに、やさしくされたら……







 「ううっ…」

 とうとうナナは、せきを切ったかのように大声を上げて泣き始めた。

 「うわぁぁあんっ…!」








 突然彼女が大泣きを始めてしまったので、一瞬驚いた様子の薔でしたが、

 「どーした?」

 肩をそっと撫でながら、穏やかな声を掛けていた。






 「ごめんなさいっ、ごめんなさいぃ…っ!」
 「何で謝ってんのか、ちゃんと言わねぇとわかんねーぞ?」

 ナナは次々と、涙を零しながら、

 「……っう、ぐ、今日は…っ、」

 肩を震わせ、涙ながらに話し始めた。






 「薔のっ、16歳の、お誕生日、で…っ、」
 「ん、」
 切々と話すナナの言葉ひとつひとつを、やさしく肩を撫でながら薔は聴いております。

 「おめでとうを…っ、言いたいのに、わたしなんっにも、プレゼント、用意、できなくて…っ、」
 「ん、」







 小降りだった雪は、いつしかほとんど上がっていた。


 「せっかく、アルバイト、したのに…っ、薔にっ、お誕生日、プレゼント、あげたくて、働いたのにぃぃ…」
 「………………。」

 涙とともに、ナナの切なる想いは溢れだします。

 「でも…っ、お給料日、明日だったんですぅ…っ、ごめんなさあぁい…!」











 「うぇっ…、えっ、えっ…」
 そのまま泣きじゃくっておりますと、いつの間にか肩の手の動きが止まっていたので、

 (…………あれ?)

 何も言われないこともあり、ナナはひどく心配になって泣きはらした瞳を開けた。









 薔は片手を口元へ当て、黙って俯いている。

 「どっ、どうなさいましたぁ!?熱でも出たんですか…!?大丈夫ですかぁっ…!?」

 まだ涙は流れているが、懸命に彼を心配する、ナナ。




 すると、薔は確かに、でもぽつりと言ったのでした。


 「あー…、やべえ……」

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