※※第108話:Happy Birthday(&Christmas Eve!).2







 ずぅぅぅん…

 パーティーに出席している、桜葉宅ファーザーはうなだれておりました。

 「お父さぁん、鬱陶しいんで、家に帰ってからにしてくださいよぉぉ。」
 「母さぁんは黙っててくれぇぇ……」




 ちなみに、父も母も、いったん家に送り届けてもらってから、正装に着替えて、こちらにきております。





 「なんでゾーラ兄ちゃぁんなんだぁぁ?日本人だったじゃないかぁぁ、」
 「お父さぁん、ブツブツ言っても何も聞こえないですぅぅ。」

 ところが、母の声も悩める父には聞こえていない。



 ……しかもこんなすごぉい家にぃ、住んでいたとはぁぁ。






 「反則だぁぁ…」

 タキシードって窮屈だなぁと思いながら、父はぽつりと呟いた。




 そこへ、

 「いやいやぁ、あなたが桜葉さんですか!?うちの要がいつも、お世話になっとります!」

 必汰と思いきや、ワハハと笑う奏がやってきたのだ。















 ――――――――…

 「後で桜葉のご両親に、ご挨拶させていただいてもいいかい?」

 ふたりっきりのバルコニーで、こけしちゃんと醐留権は実にいい感じだった。
 ちょっとどころか、けっこう気温だけは寒いけど。


 「ご挨拶ぅぅ?」

 こけしちゃんはもじもじと、聞き返します。




 「私は教師だが、桜葉とは真剣に、お付き合いさせていただいてると、」
 そんな彼女のやわらかなくちびるに、親指を当てた醐留権は、

 「クリスマスプレゼントだ、受け取ってほしい。」

 と、こけしちゃんに小さな箱を差し出したのです。





 大きさと形からして、中身は何だかすぐにわかった。

 「開けてみてもぉ、いいぃ?」
 「もちろんだとも。」



 醐留権は笑っておりまして、ふるえる手で箱を開けてみたこけしちゃんは、

 「キレイぃぃ…」

 更なる箱のなかに、シンプルだがキラキラと輝く指輪を目にしました。





 「これを、桜葉が私のものだという、証拠にしてほしい。」
 「あぁぁっ…」

 醐留権はこけしちゃんの手を、そっと取って、

 「私がはめてもいいかい?」

 ゆびさきにくちづけた。





 こくぅぅん…

 またしてもこけしちゃんは、無言で頷く。



 「貸して、」
 「はいぃぃ…」

 そして醐留権は、いったん指輪を手にすると、

 スゥ――…

 とこけしちゃんの右手の薬指に、はめていったのでした。






 「あぁぁ、ぴったりぃぃ…」
 「よかった、とてもよく似合ってるよ。」

 こけしちゃんは恥ずかしそうに、指輪を眺めまして、

 「それに、桜葉のドレス姿には、すごくそそられるものがある……」
 「ゾーラ先生ぇぇ…」

 寒さなんてなんのその、このままR指定シーンに突入かと思われたのですが…、



 バンッ――――…

 「悠香ぁ、お前のゾーラ兄ちゃぁんの兄ちゃぁん、とぉっても苦労なされたんだなぁぁ。心優しい人だぁぁ。」
 「まぁまぁお父さん、もっと飲んで!」

 とんだ邪魔が入った。





 「………………。」
 「あぁぁ、お父さぁん、酔っ払ってるのぉぉ?」

 ……めげるな、ゾーラ先生!


 まだ25日、ふたりっきりの夜があるよ。

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