※※第108話:Happy Birthday(&Christmas Eve!).2








 「………………。」

 ナナは黙って暗い空を見上げ、降りてくる雪たちを眺めていた。


 …………ばか、

 雪の、バカ……




 …八つ当たり、やめてよ…(by.雪代表)








 ゴシ…

 堪らず滲み出ていた、涙を拭う。

 (ちがうよ、バカなのはわたしじゃんか…)





 家々には明かりが灯って、ろうそくの炎みたいに、雪が時折ちらつかせる。







 (ごめんなさい…)
 やっぱり涙は流れ落ちて、ナナはとめどない想いを浮かべた。

 (まだ、“おめでとう”も言えてなくて…、わたしがバカなばっかりに、プレゼントも用意できなくて…、ほんとうに、ごめんなさい、薔……)








 ナナは、ポロポロと涙を零しながら、

 「ここから、一円玉千枚とか、出てこないかなぁ…、明日になったら返しますんで…」

 マンションの前にある、自動販売機の釣り銭口を覗き込んだ。


 ……自動販売機は、一円玉使えないけど…





 ………………はっ!


 そして我に返り、

 「そんな風にして手に入れたお金じゃダメだよ、バカバカぁ!」

 とんでもなくお久しぶりに、彼女は自分のあたまをポコポコ叩いた。





 そんなこんなを、ナナが一人で繰り広げていると、

 ザッ…ザッ…

 誰かが、雪をかき始めたのだ。











 「こんな、師走に雪なんか降るなよぉ、ああ腰痛い。」

 そのマンションの管理人さんは、ブツブツ文句を言いながら、せっせと雪をかいておりました。


 そんななか、

 「おんやぁ?」

 自動販売機の前から、ポカンとしてこちらを見ている女の子を管理人は発見したのだ。

 (チャーンス!)






 瞳をキランとさせた管理人さんは、視線でその子に訴えた。

 お嬢さん、このマンションの住人だよね?住人だったらさぁ、雪かいてくれないかなぁ?おじさんね、こう見えてじつは椎間板ヘルニアを患ってるんだよ!

 と。





 (…………はわぁ!)

 なんか見られてる!と思ったナナは、おじさんの心情をとりあえず覚ってみた。

 (雪をかかないと、その板で殴られるんですかぁ!?)




 ……君は、薔の視線しか的確に読み取れないのか?

 それでいいか。







 「わわわたくし、そちらやらせていただきます!」
 「うそぉ、助かる!家賃半額にしてあげたい気分!」

 流れで、ナナはマンションの雪かきをすることとなった。

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