※※第108話:Happy Birthday(&Christmas Eve!).2








 準備は、まだ整っていなかった。

 (あぁぁ、うまくいかないぃ。)
 ドレスに合うメイクが、どうやってもできないと、納得いかないこけしちゃんは、

 (胡桃沢先輩ぃに教えてもらおうかなぁぁ、でもぉ、今日はイブで学校お休みだからぁ、羚亜くぅんといるかなぁぁ?)

 落ち着かない心持ちでもおっとりと、部屋のなかをウゥロウロした。





 すると、

 ピンポーン

 来客が。



 「はいはーい、」
 ドタバタと走る音が聞こえて、

 ダダダダダタッ…

 次には階段を駆け上がる音も聞こえたかと思ったら、


 バ――――――――ン

 こけしちゃんの部屋のドアを勢いよく開け、司は大声で言いました。

 「姉ちゃん、ゾーラ兄ちゃんがお迎えにきたよーっ!」








 ちっとも支度できていない、こけしちゃんは頬を赤らめていた。

 「あぁぁ、反則ぅぅ。」
















 ――――――――…

 「実穂子サ〜ン、メリークリスマース!」

 玄関を開けてすぐに、このテンションだった。

 「ハリーさん、雪の中ごめんなさい、大丈夫でした?」
 しかし葛篭は、まず彼を気遣う。


 「OH〜、大丈夫デース!実穂子サンのためなら〜、野を越え山を越エ〜!」
 野も山も特に越えていないハリーは、明るく笑って返します。



 「…………プッ、」

 とうとう葛篭は、腹を抱えて笑いだした。

 「あはははははは!」




 「AHAHA〜!」
 つられてハリーも笑ってから、

 「寒かったでしょう?あがってあったまってください。」
 「もう心はあったかいデース!」

 ふたりは暖かい、リビングへと向かったのでした。

















 ――――――――…

 「桜葉、そのままでもとても可愛いよ。」
 彼女部屋にお邪魔している醐留権は、微笑んで口にした。


 「…ゾーラ先生ぇ、雪なのに大丈夫だったのぉぉ?」
 照れまくっているこけしちゃんは、もじもじと話を逸らし、

 「あぁ、今朝ちゃんと、スタッドレスに履き替えたからね。」

 眼鏡をくいっとさせ、醐留権は諭す。





 「………………、」

 一瞬、ふたり同時に無言になったのだけど、

 「桜葉、」

 トレードマークの眼鏡を外して、醐留権は言った。

 「少しだけ、ここでキスしてもいいかい?」








 こくぅん…

 真っ赤なこけしちゃんは、頷きます。

 「グロスはあまり、落とさないようにしないとだな、」

 クスッと笑って、醐留権は彼女を抱きしめると、

 チュ――――…

 キスを落とした。






 「んぅ…っ、」
 こけしちゃんはうっとりと、甘い声を漏らす。








 このとき、

 「ゲイちゃんがおれに、なついてくるーっ!」

 司は夢中になって、リビングでゲイちゃんと遊んでいた。



 “せっかくのイヴだ、協力してやるよ、”

 さすがは、猫界のサディストこと、ゲイちゃんですね!

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