※※第103話:Make Love(so Captive).47







 マンションの前で薔を降ろしてから、リムジンはゆっくりと走り出した。




 見送る姿を、見送って。


 「…いくつになっても、可愛いもんだ、」
 夕月は、とても穏やかな表情でシートへともたれた。

 「一足早く“おめでとう”でも言ってやりたかったが…、ナナちゃんより先に言っちまったら男が立たねえよな。」





 そしてふと、向かいの車窓を見つめると、やさしく笑って言葉にしたのです。

 「いい笑顔が見れた、ありがとな、ナナちゃん。」

 と。






 「あぁ、花子ちゃんを忘れちゃいけねぇな、」
 続けて告げた夕月は、くっくっと楽しげに笑っていたのでした。














 ――――――――…

 「あああああっ!」

 本日のバイトを終え、着替えも終えたナナは裏方から出た途端、ウルウルと歓喜の大声を上げた。

 「ほぼ6時間ぶりの薔です!」






 「ん?」
 ちゃんとお迎えにきた薔は、すぐさま彼女へ目をやって、

 「どうなさったんですか!?またいちだんと、かっこよくなってませんか!?あっ、でも6時間前でもいつも、いちだんとかっこよかったです!」

 ナナはすぐさま、彼へと駆け寄った。




 (感動の再会…!)
 店長さんは感涙にむせておるが、

 (ま、まぁ、無理もないね、)

 お客さん方は、ポカンとしたり頷いたり。




 「今日は来れなくて、悪かったな、」
 「いえ!なんだかわたしちょっと、申し訳なくなってきちゃいました!」
 「なる必要ねーだろ。」

 それはその、鞄の中のノートが全てを物語っているんだけど、

 「重ぇだろ?一つ持ってやる、」
 「ありがとうございます!中は見ちゃダメですよ!?」
 「あ?」

 とか交わしながら(ナナは若干ピンチか?)、ふたりは仲良く手を繋いで帰って行ったんだとさ。






 「マジでうらやま…」
 「ねっ!」

 切実に泣きそうなのはまたしてもあの助っ人お姉ちゃんでして、店長さんはやはりなぜだか得意げであります!

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