※※第103話:Make Love(so Captive).47
心なしか雪が降りだしそうな、灰色を敷き詰めた空は広がる。
棚引いてゆく風は冷たいけれど、墓標には色鮮やかな花々が添えられて。
薔と夕月は美咲の墓前で、静かに祈りを捧げていた。
「おまえの念願叶ったな、美咲、」
祈りを終えた夕月は愛おしそうに、よく磨かれた墓石を見つめ、笑う。
薔もゆっくりと、瞳を開け、黙って前を見た。
(なんか、とてつもなくかっこいいオーラの二人組がいる…!)
たまたま参拝に訪れていた人やなんかは、雰囲気の凄さに圧倒されまくっております。
しばらく無言で、美咲と向き合っていたふたりだったが、
「さて、行くか、」
共にもときた道を歩きだした。
「………………、」
夕月は何かしらの意図があってここに連れて来たのだろうけど、未だ無言でいる薔はなぜだか、えもいわれぬ既視感を覚えていた。
――――――――…
「いらっしゃいませ!」
ナナは元気よく、バイトを再開しておりました。
「うぅ〜ん、何かここの配置がね、どうもしっくりこないのよね…」
お菓子売り場にて、店長さんは真剣に唸っておる。
「どこがどういけないんですか?」
気になったナナも、近づいてゆくと、
「どこがどうとかはね、上手く説明できないんだけど、なんか一段目のここだけ背が高いし、二段目の品薄になってきたこの商品が、後ろに倒れちゃうからインパクトがないのよねぇ…」
なかなか渋い顔で、わりと捉えどころのある的確な説明を店長さんはしてきたのだ。
「なるほど!では、わたしがちょっと変えてみます!」
「うそ〜!助かる!ナナちゃんありがとう!」
「いえいえです!」
上手く説明できとるやないかい!とかは特にツッコむことなく、ナナはてきぱきと配置替えを始めた。
ぽふっ…
棚掃除のために使っていたホワホワのはたきが、床へと落ちた。
「あっ、」
ナナは慌ててそれを、拾い上げようとしたのだけど、
スッ――――…
先にだれかが、拾い上げたのだ。
「あ、ありがとうございます、」
きちんとお辞儀をしてから、ナナはホワホワのはたきを受け取った。
やけに目立つ金髪のその客は、少しだけサングラスを下にずらすと、
「ねぇ、俺のこと、覚えてない?」
そう、笑って問いかけてきたのである。
「う、うう〜ん?」
ナナは目を凝らし、必死に記憶を辿ったのだけど、
「まぁ、無理もねぇか、」
男は静かに告げると、赤い牛乳のパックを片手にレジへと歩いて行った。
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