※※第101話:Make Love(&Make Love!).3






 「おおおっ?」
 押し倒されそうな勢いのなか、ナナはテレビへ目をやった。

 キラキラするなかで、今流行りの大勢アイドルグループが(おそらく)新曲を熱唱している。




 「すごいですね!なんか、可愛い女の子がいっぱい出てますけど!」
 「そうか?」
 ナナはテレビを観ておりまして、薔はそんなナナを見ているわけなんですが、

 「え?可愛くないんですか?」

 目をぱちくりさせ投げ掛けてきた彼女のこの質問に、

 「まぁ、可愛くねえわけじゃねーだろうが、」

 と、薔は答えた。



 次の瞬間、

 「そうですよね!…って、えええ!?」

 訊いた張本人が、これでもかと言うほどびっくり仰天した。






 「どっ、どの子が一番、可愛いと思います!?」
 「あ?」
 薔にとってその子は目の前にしかいないんだけど、

 なんだ?こいつ、かわいいな、

 とか想った彼は、

 「…三番目あたりか、」

 とりあえず、ナナをからかってみることにした。







 「ど、どっちからですか!?右ですか!?左ですか!?」
 「南南東だな、」
 「なんなんとう!?」

 それこそ、北がどちらだかすらわかるはずもないナナは(薔も適当だろうけど)、

 「うう〜ん…」

 目を凝らしテレビを見つめ、南南東の方角を見極めようとした。



 「………………、」

 薔は片手で口元を覆い、ふるえながら笑いを堪えている。





 「ダメですね…、どっちらへんなのか、さっぱりわからないです…、そもそも南南東って、南がふたつで東がひとつですよね?なぜに同じ数ではないんですかね?東東南というのも、あるってことなんですかね?」
 それは東南東って言うんだけど、の指摘は置いときまして、ナナは悩む方向が若干ずれてきた。


 よって、

 「おまえ、もうやめろ、かわいすぎて、堪んねぇんだよ…」

 からかい甲斐がありすぎて、薔は笑い出す寸前だった。




 ところが、

 「やだあーっっ!!!!」

 突然叫んだナナが、

 ぎゅっ…

 と彼に、勢いよく抱きついたのである。




 ぐらっ

 ふたりしてバランスを崩し、

 ドサッ――――――…

 結果的にナナは、薔を押し倒していた。
















 ――――――――…

 ちゅっ…

 こけしちゃんと醐留権は、キスに突入しちゃっておりました。


 「ん…………」

 程よく効かせた暖房が暑いくらいで、火照るばかりの互いのからだは熱くなってゆく。


 ちゅくっ…と音を立てて、舌は濃厚に絡まって、

 「は……」

 吐息を混ぜつつくちびるを少しだけ離してみると、唾液が僅かに糸を引くほどだった。




 「眼鏡が邪魔だな、外してもっと、キスしてもいいかい?」
 「うんぅぅ…」
 ひどく近くで確かめると、こけしちゃんは恥じらいながら頷いて、

 カチャ…

 醐留権はトレードマークの眼鏡を、外してテーブルに置くと、

 「悠香…」

 ドサッ――――――…

 こけしちゃんを、押し倒したのであった。

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