※※第98話:Make Love(&Knife).44






 ふるふるっ…

 ナナは一所懸命に、首を横に振る。



 「あー、もういい、俺が壊す前に、おまえはその血を舐めろ。」
 頬へ両手を当て、流れ落ちる涙をゆびで拭いながら、薔は命じてくる。


 「わたしまだ、っ、言いたいこと、ありますっ…!」
 「言う事聞けよ、もう乾いてんだよ、」
 「やですっ…!」
 泣きながら抵抗を試みる、ナナだったが、

 チュク――――…

 いきなり両手を掴まれ、強引にくちびるを奪われた。





 「ん……っ、」
 舐めながら、僅かばかりの血液が流れ込んで、ナナは薔へとしがみつく。

 チュプ…

 甘美な血の味がして、舌を重ね絡めて、音を立ててむさぼる。



 「ん…んっ、……んっ、」

 濃密に声は漏れて、膝が砕けるナナをつよく、薔は支えて抱きしめた。







 「はぁ……っ、」

 やがてくちびるを離すと、ナナがきつくしがみついていたため、薔の肩からは片方だけ、裂けたトップスがずり落ちていた。


 「ここ、舐めるだろ?」
 少し乱れた髪を片手でかき上げ、誘うような目つきで彼は微笑んで。

 「あ…っぁ、」
 うっとりと見つめるナナは、その妖しさに引き寄せられた。






 ちゅっ……

 滑らかな肌へと、くちびるを押し当てる。

 「……ん、」
 微かな声を零し、薔はナナの肩を抱く。




 ツ――――…

 流れ落ちている血液を、舌を伸ばして舐め取って、

 「……っ、」

 ぎゅっ…

 薔は切なく瞳を閉じ、ナナのニットをそっと掴んだ。





 音を立てるようにしながら、思ったよりも深かった傷口を舐めながら血を吸ってゆくと、

 「は……ぁっ、」

 やけに色気のある息を吐いて、

 ガタンッ――…

 ナナを抱きしめた薔はくるしげに向きを変えると、シンク台へもたれるようにして倒れ込んだ。






 「はぁ…っ、はぁ…っ、」

 大分はだけてしまい、ぐったりと薔は、擦り切れた呼吸を上げつづけている。


 「あ……」
 傷がキレイに消えたため、くちびるを離してみたナナは、

 ふわっ…

 乱れていた彼の髪を、両手でやわらかく撫で始めた。





 「薔…」
 「ん?」

 ふたりは、ただやさしく、見つめあう。



 「醜くなんかないですよ、いつ、どこを見ても、」
 泣きたいほどの苦しさのなか、ナナは微笑んで、彼を抱きしめて。


 そして、力強く、告げたのでした。

 「わたしだって、おかしくなるくらい、ほんともう、薔が大好きなんです……」

[ 120/538 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る