※※第98話:Make Love(&Knife).44
こけしちゃんと醐留権は、夜景が綺麗に見渡せる、高級レストランに来ておりました。
マナーに詳しいこけしちゃんでも、やっぱりこういうとこは緊張してしまいまして。
「ゾーラ先生ぇ、あたしねぇ、こないだの埋め合わせがまさか、こんな凄いとこだとはぁ、思わなかったのぉぉ。」
なんだか気まずそうにするこけしちゃんですので、
「すまない、桜葉、私はこういうところしか、詳しくないのだよ、」
さすがは一流財閥ですね、な返しを、同じく気まずそうに醐留権はしてきた。
「ゾーラ先生ぇが謝ることは、ないのぉぉ。何だかんだで今夜はぁ、お泊まり許してもらえたしぃぃ。」
ちょっとずつ緊張が解れてきたのか、こけしちゃんはにこっと微笑みまして、
「本当は週末まで、待つべきだったんだが、」
醐留権もちょっと照れくさそうに、笑った。
どきぃぃっとしたこけしちゃんは、とりあえず俯いてから、
「あぁぁ、このスープ美味しいぃぃ。」
と、丁寧に食事を再開した。
穏やかに笑いながら彼女を見つめる醐留権はこのあと、すぐ下の階にスイートルームを予約してあった。
――――――――…
後半は助っ人お姉ちゃんの質問攻めに遭いかけたナナだったが、何とか逃げ切り、お迎えにきた薔と仲良く帰宅できました。
そんでもってナナは腹ペコだったこともあり、花子も揃ってのお夕食タイムと相成った。
ザァ――――――…
この日、是が非でも後片付けを願い出たナナは、一所懸命に皿を洗っておりました。
よくよく気づいてみると、立派な食洗機が備え付けられているんですが、まあ、これも花嫁修業だと思ってさ。
身も蓋もないですが、結果的には嫁ぎ先でしているわけなんですけどね。
そんななか、
ぎゅっ…
突然、ナナは後ろから、抱きしめられたのである。
ドキッ!
として、跳ねた心臓でも、何とか両手は滑らないようにと皿を必死に留めて、
「あ、あの…、」
それでも鼓動は加速するばかりで、ナナはおもむろにくちびるを開いた。
「ん?」
やさしい声は、左の耳元、そっと響きます。
「…………っっ、」
思わずビクンッと、ナナはふるえてしまい、
「どーした?」
ニットの上から腕をそっと撫で、吐息すら吹き掛けるよう薔は甘く囁くのです。
「くすぐったい…です……」
ゾクゾクと下から疼くみたいに感じ、それでもナナはあまり枚数があるわけでもない皿たちを、洗い終えました。
すると、薔はクスッと笑って、
「やっとおまえを、独り占めできる、」
スッ――――――…
傍らの、水切り籠から、小さめのナイフを手に取った。
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